潮汐
(Tide)
 主として月及び太陽の引力により潮汐力が地球に作用し、海面の高さが約12時間
周期で変動する現象を潮汐(海洋潮汐)と言う。
 潮汐は、月が子午線に正中し起潮力が最大になってから一般に2〜3時間後に海面
の高さが最も高くなる。潮汐の振幅は、0.5m程度であるが、これが潮汐波(Tidal 
Wave)となって海洋を伝播し、地形の影響を受けて変形する。この結果、潮汐現象は
場所よって大きく異なっている。世界で最も潮汐が大きい所は、カナダ南東部の
ファンディ−湾で大潮の平均潮差が15m程度になる。イングランド西岸,朝鮮半島西
岸等でも 10m程度になる所がある。
 日本沿岸における大潮の時の平均潮差は、太平洋岸で 1〜2m、瀬戸内海で 1〜3m
程度である。有明海は日本最大で5m以上になる。
一方日本海沿岸は、20cm〜50cm程度と小さい。この潮汐現象について、日本周辺に
おける主要な港(標準港)の毎日の高潮時,低潮時とその潮高及び潮流(潮汐によっ
て生じる流れ)を海上保安庁水路部が調和定数を用いて推算し、その結果を潮汐表
にまとめて毎年刊行している。
 ここでは、この様な潮汐現象についてより深く理解するために、これを理論的に
勉強し更に実際の潮汐現象を潮汐表を用いて調べてみることにする。

7−1 潮汐に関する用語
(1) 潮高(Tide height),潮位(Tide level)
  基本水準面(略最低低潮面)から測った海面の高さであり、風浪やうねり、
港湾の固有振動(セイシュ)等の短周期変動成分を除いた高さ。潮位とも言う。
(2) 高潮(High water)と低潮(Low water)
 潮汐によって海面が最も高くなった状態が高潮で
 最も低くなった状態が低潮。
(3) 潮差(Tidal range)
 相次ぐ高潮と低潮との海面の高さの差が潮差。
(4) 大潮(Spring tide)と小潮(Neap tide)
  潮差は地球,月,太陽が一直線上に並んだ時から1〜2日後に
 極大となり、地球において月と太陽のなす角が 90゚になった時
 から1〜2日後に極小となる。潮差が極大となった時が大潮、
 極小となった時が小潮である。
(5) 朔(New moon;さく)と望(Full moon;ぼう)
 月が地球と太陽の間にあって地球から月を見ることが出来ない
 状態が朔であり、地球が月と太陽の間にあって月が満月として
 見える状態が望。
(6) 潮令(Age of tide)
 朔あるいは望から大潮になるまでの時間を日数によって表したもの。
(7) 月潮間隔(Lunitidal interval)
 月がある地点の天の子午線に極上正中又は極下正中してから、
 その地点が高潮になるまでの時間が高潮間隔(High water interval),
 低潮になるまでの時間が低潮間隔(Low water interval)である。
 両者を総称して月潮間隔と言う。
(8) 大潮升(Spring rise)
 基本水準面から大潮の平均高潮面までの高さを大潮升と言う。
(9) 近地点潮(Perigean tides)
 月がその公転軌道上、近地点付近に来た時に潮差は最大になる。
 この時の潮差極大の潮汐を近地点潮と言う。
(10)日潮不等(Diurnal inequality)
 相次ぐ2つの高潮又は相次ぐ2つの低潮における海面の高さ及び時間間隔は、
 同じ日であっても必ずしも一様にはならない。この現象を日潮不等と言う。
(11)平均高潮間隔(Mean high water interval)
  長期間にわたって高潮間隔を平均したもの。
(12)平均低潮間隔(Mean low water interval)
  長期間にわたって低潮間隔を平均したもの。
(13)潮時差(Difference of tidal hour)
 潮時差=[M.H.W.I.]-[M.H.W.I.]0+31/30・(L0-L)+(S-S0)
  [M.H.W.I.] :平均高潮間隔  [M.H.W.I.]0:標準港における平均高潮間隔
 L:経度を時間で表したもの。L0は標準港における値
  S:採用した標準時が世界時よりも進んでいる時間。S0は標準港における値
(14)潮高比(Ratio of the range of tide)
 潮高比=[大潮差]/[大潮差]0    
 大潮差(Spring range):大潮における潮差を平均したもの
(15)分潮(Tidal constituent)
 天の赤道上を各々固有の速度で回っているある一つの仮想天体による潮汐。
(16)半潮差(Semi-range)
 各分潮の潮差の1/2を半潮差と言う。
(17)遅角(Phase lag)
 各仮想天体が極上正中してからその分潮が高潮となるまでの時間を
 角度によって表したもの。
(18) 月齢(Age of Moon)
 新月(New Moon:月と太陽が同じ方向にある時)からの経過時間を
 平均太陽日で表現したもの。満月の時の月齢は15である。
(19) 天文潮(Astronomical Tide)
 天体の引力(起潮力)による潮汐。天体の引力による起潮力は海洋だけ
 ではなく個体地球や大気等にも作用して潮汐を引き起こす。
 天体の起潮力による海洋の潮汐を海洋潮汐(Ocean Tide)、
 個体地球の潮汐を地球潮汐(Earth Tide)、
 大気の潮汐を大気潮汐(Atmospheric Tide)と呼ぶ。
(20) 気象潮(Meteorological Tide)
 気圧,風,海水温度等の変動によって海面の高さ(潮位)が変化する現象。
(21) 基本水準面(chart datum level, standard sea level)
 海図に記載されている水深の基準面。水深は基本水準面から海底までの距離。

<潮汐(Tide)>
   ☆天文潮(Astronomical Tide)
     *海洋潮汐(Ocean Tide)
      *地球潮汐(Earth Tide)
    *大気潮汐(Atmospheric Tide)

  ☆気象潮(Meteorological Tide)
7−2 静力学的潮汐論(Equilibrium Theory of Tide)
 地球全体が海水に覆われており,しかも海水に全く粘性がないものと仮定すると、
海面は常にこれに働く潮汐力と釣り合う様な形状を保つはずである。
 潮汐の現象をこの様に考えて論ずる理論を静力学的潮汐論と言う。
静力学的潮汐論によると、潮汐力による海面の高さの変動は次のように表される。

静力学的潮汐の式
    H:潮汐による海面の高さ(平均海面からの高さ), G:万有引力定数, 
  M:天体の質量, R:地球平均半径, g:地球表面における重力加速度,
  D:地球中心と天体中心との距離, l:観測地点の緯度,L:観測地点の経度,
  d:天体の赤緯, h:天体の時角, E:天体の E値
     R=6371.2293×103 [m]             g=9.8 [m/s2]
   GMM=3.986005×1014×0.0123 [m3/s2]        DM=384403×103 [m]      
     GMS=3.986005×1014×332946.038 [m3/s2]    DS=1.4959787×1011 [m]    
      GMM:万有引力定数と月の質量の積,  DM:月の地心距離
      GMS:万有引力定数と太陽の質量の積,DS:太陽の地心距離

例 静力学的な潮汐力の式を用いて月のみによる平成 4年 2月 1日の富山
  (l=36゚45'N, L=137゚10'E)の潮汐を2時間毎に1日分計算せよ。
    ただし当日世界時0時における月の E値と赤緯をE(0H)=13H52M54S, 
    d=22゚49'Sとし, E値,赤緯とも変化しないと仮定して計算せよ。

[解答]
静力学的潮汐の式
l=36゚45'N=36.750゚ L=137゚10'E=137.167゚ d=22゚49'S=-22.817゚ 
E=13H52M54S=13.8817H=208.226゚  

[U=0H] h=U+E+L=208.226゚+137.167゚=345.393゚
       H(0)=0.179*{3*[sin(36.750)sin(-22.817)
            +cos(36.750)cos(-22.817)cos(345.393)]2-1}=-0.054
[U=2H] h=U+E+L=30゚+208.226゚+137.167゚=375.393゚
       H(2)=0.179*{3*[sin(36.750)sin(-22.817)
            +cos(36.750)cos(-22.817)cos(375.393)]2-1}=-0.055
[U=4H] h=U+E+L=60゚+208.226゚+137.167゚=405.393゚=45.393゚
       H(4)=0.179*{3*[sin(36.750)sin(-22.817)
            +cos(36.750)cos(-22.817)cos( 45.393)]2-1}=-0.135

   答  世界時           0H    2H    4H    6H    8H   10H   12H
       海面高さ[cm]    -5.4  -5.5 -13.5 -17.7  -7.9  13.2  30.3
       世界時        14H   16H   18H   20H   22H
       海面高さ[cm]    29.7  11.9  -8.9 -17.8 -13.0 

[補足] 太陽の場合
静力学的潮汐の式


問1 静力学的な潮汐力の式を用いて月と太陽による赤道上の地点(l= 0゚ 0', 
    L=135゚ 0'E)の潮汐を2時間毎に1日分計算せよ。ただし月と太陽の
    E値と赤緯をEMOON=12H00M00S, dMOON=0゚ 0',
    ESUN= 6H00M00S, dSUN=0゚ 0' とする。
問2 静力学的な潮汐力の式を用いて月と太陽による赤道上の地点(l=35゚30',
    L=135゚ 0'E)の潮汐を2時間毎に1日分計算せよ。ただし月と太陽の
    E値と赤緯をEMOON=12H00M00S, dMOON=15゚ 0'N,
    ESUN= 6H00M00S, dSUN=10゚30'Sとする。
潮汐力と海流