電子航海暦について
(On the Computer Nautical Almanac)
1 概要
海上で天体を観測して船の位置を求めるためには、太陽系天体や恒星
の世界時に対する視位置(視赤経,視赤緯)及び恒星時に関する情報
が必要である。航海者のためにこれらの情報を表にまとめたものが
航海暦(Nautical Almanac)であり、公式に発行された最初の暦は、
英国の1767年用航海暦"Nautical Almanac and Astronomical Ephemeris"
であった。現在、毎年発行されている航海暦には、U.S. Naval 
Observatory(USNO:米国海軍天文台)と Her Majesty's Nautical 
Almanac Office(HMNAO)の米英航海暦"The Nautical Almanac" や日本
の海上保安庁の"天測暦" 等がある。

 天体を観測して位置を求める技術(天文航法)は17〜19世紀に
ヨーロッパで開発された。そして、この天文航法の開発により航海学
の学問体系が確立したと考えられている。人工衛星までの距離を電波
で観測して位置を求める衛星航法が広く普及した現在、天文航法はほ
とんど利用されなくなっているが、測位計算の基礎を学ぶ上で非常に
重要であり、現在でも商船系の教育機関で教えられている。教育に
計算機が広く取り入れられるようになった現在、天測計算(天体観測
データを船位に変換する計算)や航海算法等の航海計算は表ではなく
計算機で行われるようになっており、計算機上で動作する航海暦すな
わち電子航海暦があれば非常に便利である。
 海上保安庁発行の天測暦にはコンピュータ用天体位置計算式が紹介
されているので、この計算式を用いて電子航海暦を作ることが可能で
あるが、この場合は毎年膨大な係数を計算機にキーボード入力する必
要があり、非常に不便である。

 そこで、天測計算や人工衛星軌道計算等で利用出来る、係数のキー
ボード入力等を必要としない高精度電子航海暦を開発した。ここで、
紹介する電子航海暦はJPLエフェメリスと星表FK5を利用して、
光行差、視差、太陽重力場による光の曲がり等の補正を行い、45個
の常用恒星と太陽系天体(太陽、水星、金星、火星、木星、土星、月)
の視位置(視赤経・視赤緯)、グリニジ時角、E値等を計算するため
のFortranプログラムである。