マックde記号論(言語学のお散歩)

ミレニアム欧州旅行〜子どもたちは何を学んだか?

はじめに〜準備
12月21日(木)■成田⇒パリ⇒ジュネーブ
12月22日(金)■ジュネーブ⇒インターラーケン
12月23日(土)■インターラーケン:ユングフラウヨッホ
12月24日(日)■インターラーケン⇒ミラノ⇒フィレンツェ
12月25日(月)■フィレンツェ:ピサ/フィレンツェ
12月26日(火)■フィレンツェ⇒ローマ⇒パリ
12月27日(水)■パリ:エッフェル塔→オルセー→ルーブル→バスツアー
12月28日(木)■パリ:帰路
12月29日(金)■成田着
終わりに〜その後

12月29日(金)


ジャンボ

 エール・フランスAF-276機内。事件というのはこういうことだ(身体的な問題ではなく、衛生上の問題だと思うから思い切って書く)。

 宮本直哉・幸子さん夫婦は飛行機に乗った時から無口になっていた。奥さんはマスクをかけたまま何かを我慢している様子だった。具合でも悪いのかと思っていたが、大して気にもしなかった。

 大阪の松阪さんが妻のところに寄ってきて何かを話し始めた。何か面白い話でもと思ったら深刻な話だった。宮本さん夫婦の横に話題君(仮名)が座っているのだが、臭うのだという。しかも強烈な臭いで頭が痛くなってくるのだという。チーズの腐った臭いでとても耐えられない、どうか僕の横の空席に座らせてくれないか、という依頼だった。

 そういわれたら、助けるしかない。早速、空席―僕―空席―未蘭と座っていたのを空席―空席―僕―未蘭と開けてあげる。そして宮本さんの所にいって、「ねえ、眠れないなら、ちょっとお話しない?」と救出に行くが、息を詰めて話したので臭いがしたかどうか分からなかった。こうして、僕の横に宮本さんが座ることになったが、僕自身が臭わないかクンクンと匂いを確かめた。

 話を聞けば大変だったらしい。ずっと下を向いて我慢していたという。宮本さん夫婦が鶴見に住んでいるというと、家に寄らせてほしいというニュアンスで言われて息が止まりそうになったともいう。拒否すると日本に着いてから夜行のバスで帰るのでそれまで原宿でナンパして帰ると話していたという。

 ホテルの二人部屋では長峰さんのお父さんが一緒だったという。我慢強そうな人なので一言もそんな話はされなかったが、娘さんが「お父さん、ストレスたまるでしょ…」と話しているのを思い出した。家族はやっぱり4人の方がいいと初めて思った。

 後でツアコンの井上さん(フルネームが、この時分かった------次は1月のイタリア周遊の添乗だという)がツアーアンケートを回収している時に宮本さんがこれまでの事情を話した。すると井上さんが「そうなんです、今、私が回収した時にあれっと思ったんです」というのでみんな大笑い。祐貴も「何がおかしいの?」と聞いてきて近くへ行ってみてブルーチーズのような臭いを確かめたという。ナポレオンが眠った時に部下がチーズの匂いをかがせたら「ジョゼフィーヌ、今日はダメじゃ」といった話が残っているが、そんな艶のある話ではない。深刻なのだ。

 宮本さん夫婦とは色々なことを話した。僕には妻との年の差と、職業が気になるようだった。ゴールドカードを持っていっていたので松阪さんからも自営業だと思われていた。高専の教師だというと「うちの会社にいる高専卒の連中はみんな優秀だよ」と話してくれる。本当に席を替わってあげたのを感謝していて、しかもお陰で色々とお話できてよかったと言われた。

 狭くなって眠りにくくなったのでちょっと席を外す。隣の夫婦はぐっすり眠っているようだ。体操したり、窓を見たりした。最近、「エコノミークラス症候群」というのが騒がれていて、ころっと死にたくないのだ。1992年以来、成田で25人が死亡していることが確認されている。運動と水分の補給が大切だという。

 シベリアを空から眺めていると星雲のような街の灯りや幾何学的な街の灯りが見えてくる。どんな暮らしをしているのだろうか?飛行機の中で眠っている人はどんな夢をみているのだろうか?

 そのうち、日の出が見えた。1万メートルの飛行でもまるで人工衛星から眺める地球の夜明けのようだったので、妻も呼んで見ようとする。既に窓を占拠されていて、なかなか見ることができなかった。周りに待っている人がいるとか考えない人が増えているのだろう。話題君もまったく気がつかないのだろうか?

 日本上空で機内が明るくなって軽食が出る。クレープを中心とした料理だが、子どもたちは眠っていて食べない。

 窓から山並みが見えてきて、そのうち富士山も見えてきた。今度は祐貴も未蘭もしっかりと起きて眺めている。「あの辺におばちゃんちがあるんだね」などという。

 房総の海岸が見えてきて、急降下。

 8時30分に成田着。

 前の席の松阪さんが荷物を降ろした時に「臭い!きっと何か腐ったのだわ」といって手荷物の中をずっと開けて確かめるが、後ろに話題君が立っていただけだった。松阪さんの真剣さにびっくりしてしまった。

 降りようとすると妻が「スチュワーデス(フライト・アテンダント)さんと撮ってあげる」という。今さらと思ったが、あまりにも綺麗な人で妻が頼んでしまったので、一緒に撮る。名前を聞くと「とよしま(豊嶋?豊島?)です」といわれる。ミールサービスやギャレーでの仕事などいっぱいあるのに笑顔を絶やさない姿が本当に美しい。アーリー・ホックシールドのいうように「感情労働」と言ってしまえばお終いだ。ちなみに、ギャレー(galley)というのはガレー船から来ていて、ここで働く人が自分たちがガレー船の奴隷と同じということで名前がついたとされる。年取ってから「どうして私、トイレ掃除してるんだろう、空飛ぶウェイトレスじゃないの」と悩む人も多いという。

 皆さんに「よいお年を!」といって飛行機を降り、9日間の初の家族海外旅行が無事に終わった。

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