金川 欣二:マックde記号論(言語学のお散歩)


【18禁】 

笑説 越中語大辞典



●…ら

 「…ね」。例:「でっかいと雪積もっとるっら」(たくさん雪が積もっているね)。

●ラーメン

 椎名誠が「富山のラーメンはコノヤロ的にまずい」(『週刊文春』の「新宿赤マント」)といって、「薬膳ラーメン」を作った榎松雄をはじめとする県内の業者が反論した事件があった。椎名が食べたのは駅裏にあるラーメン屋だとしていて、必ずしも富山のラーメンとして括るには問題があるだろうけれど、そのラーメンを富山の人が喜んで食べているのだから、同じかもしれない。その後、「富山ブラック系」も食べてみたらしいが、「しょっぱい」としか書いてない。

 ラーメンを全国制覇したチェーンがないことから分かるように、好みだから問題外だろうし、旅の印象ほど当てにならないものはない。いや、僕はラーメン論を読む前にその人の出身地を見てしまう。そうしないと好みがまるで違う。

 一方で富山は「知られざるラーメン王国」だという人もいる(栗栖十三『麺喰紀行』碧天舎)。栗栖は「富山ブラック系」で知られる大喜のラーメンを富山「クド系」ラーメンの極めつけと語っている。

 大崎裕史の『無敵のラーメン論』(講談社現代新書)では金沢などがないにもかかわらず、富山のラーメンを取り上げて「二つの醤油味」という項目を作っている。末広軒やまるたかやなどの透き通った醤油味と大喜などの醤油味である。後者を「スープが見るからに真っ黒でしょっぱそうで、実際にかなりしょっぱい。そして、最初からかなりの胡椒がかけられている。そしてチャーシューが多い。ネギも多い」という。

 小野員裕の『ラーメンのある町へ!』(新潮社)ではきりん飯店、ラーメン一心、まるたかや、大喜、東々亭の牛もつラーメンに行っている。どこへ行っても「ショッパイ」という感想だった。富山市内のラーメンを食べている限り、僕と同じ感想だ。呉西に住んでいる僕も大喜のラーメンなどはダメだ。小野は高岡市内の吉宗の煮込みうどんが気に入ったようだ。そして、土産に買った白エビとホタルイカの昆布〆がもっと気に入ったようだった。

 有名なラーメン屋は順不同で九頭龍、まるたかや、大喜、きりん飯店、東々亭、あらき、大三元、ザ東京ラーメン、こられん華、バクヂーなどである。きりん飯店のステーキのようなチャーシューが3枚のっている「チャーシューメン」か「五目麺」は一度食べてみるといい。アラキはホルモン中華、げんこつはネギチャーシューメン、大三元の牛タン塩ラーメン、東々亭の牛もつラーメンなど。

 ラーメンラインというのがある。ラーメンやうどんの出汁が東西で違う。カップを見ると「西」とか「W」とか書いてある。

 日清食品は1978年8月に初めて東日本と西日本で味付けを変えた「どん兵衛」を発売。東海道のうどんの出汁が関ヶ原を境に変わるという調査から、西では淡口醤油に鰹と昆布で、具には甘く煮た揚げ、東は濃口醤油に鰹だしと甘辛く煮た揚げで売り出した。「赤いきつね」の東洋水産(東京)も、1978年の発売時から東西日本の2種類(現在は関西版を加えた3種類)に分けている。和歌山・三重−富山・新潟ラインで味を変えている。ただ、明星食品(東京)は、西日本限定の「すうどんでっせ」を全国に拡大しているが、東西の売れ行きには差がないという話だ。

 県内は一つ味かというと違い、呉東ではカツオ節と醤油味が強く、東京に近い味、呉西は昆布だしで関西系という傾向がある。

 1月中旬に富山城址公園で「富山ラーメン祭り」が開催される。

 2005年に富山のご当地ラーメンとして土産用に「富山らーめん黒・白」が開発・発売された。販売するのは、県内でラーメン店「麺家(めんや)いろは」をフランチャイズ展開する「天高く」。同店のメニューにある「黒醤油(しょうゆ)ラーメン」と「白エビ塩ラーメン」を持ち帰り用にできないかと同社の会長が発案して県立大と共同開発してきた。麺とスープは深層水仕込みで黒は見た目と違ってこくがあり、あっさり。白は白エビの風味が感じられる塩ラーメン。

●雷鳥

 県鳥。日本アルプスにすむ鳥で、1955年には特別天然記念物に指定された。日本人は山岳信仰とともに雷鳥を神の鳥と厚く保護してきた。富山では霊峰立山にすむところから「立山権現のお使い」とされる。鶏の仲間である。白山や中央アルプスではすでに絶滅、いまでは北アルプスと南アルプスなどに約3千羽生息するだけで絶滅危惧種となっている。

 昭和40年代、富山県教委も弥陀ヶ原などで飼育を試みたことがある。人工的にふ化し、ひなを成鳥に育てることにも一応の成功は収めたが、野生に戻すことに疑問があり、取り組みは6年間で終わっている。近い種類で北欧に棲んでいるスバールバルライチョウ(Svalbard Ptarmigan)を飼育して、その成果を日本のライチョウに活かそうという試みもある。

 雷鳥は「雷の虫」を食べるといわれたが、雷鳥自身のカエルのような奇声から虫を想像したらしい(『世界大博物図鑑』平凡社)。雷よけ、火災よけの霊鳥として昔の人々の心をとらえたのも、この鳥が天敵を避け雷の鳴るような天気の中を飛び回るところが語源とされるのと関係あろう。

 英語ではptarmiganとかgrouseという。冬に白い羽となるライチョウ属の種をptarmigan、羽の色を変化させない種はgrouse と呼び区別される。thunderbird(雷神鳥)とはいわないが、JRは特急「サンダーバード」だ。ニワトリの仲間とされ、西欧では食用で狩猟の対象だった。

●雷鳥の木彫り

 みうらじゅん『郷土LOVE』(スコラマガジン)で「いやげもの(いやなみなげもの)」度ナンバー1だとされる。

…もらったほうも、ドキドキすると思うんです。「オレがあげた木彫り、どこやったの?」と、訊かれることを想像してみてください。だから、ほんとうに自分のことを好きになってくれる人を探したいなら、雷鳥の木彫りを買って、その人にあげればいいと思います。その人の家に行ったときに、いちばん目の届くところにおいてあった彼、または彼女とは、結婚してもいいと思います。

●雷鳥冬瓜

 トウガンは「冬瓜」と書くが、夏が旬の野菜だ。冬まで保存がきくことから、この文字があてられたとかいう。一般的なものは「琉球とうがん」であるが、「姫とうがん」を富山らしいブランドにと「雷鳥とうがん」の名前がつけられた。

●らいちょうバレー

 1977年、粟巣野、極楽坂両スキー場の中間地で県営で開業。当初はゴンドラリフトが人気を集めたが、スキー客はピーク時(95年)の約20万人から約9万人(04年)にまで落ち込み、財務内容も97年度以降、赤字が続いている。05年に石井知事が廃止を決めた。

●来富

 「らいと」と読むのか「らいふ」と読むのか分からない新聞などの文字言語。意味は「富山に来ること」で、「来日」などの連想から。新湊だと「来新」になる。

●ライトレール 

 Light Rail Transitの略。路面電車化でJRから経営分離された富山港線の新しい経営主体となる第三セクターとその路線名。2006年4月29日に開業した。しかし、こんな長い名前が定着するとは思えない。きっと「ライトレ」とかに省略されるか、ただの「電車」とされるだろう。

…日本で初の本格次世代路面電車(LRT)、富山ライトレールが富山市に開業した。JRの赤字ローカル線を譲り受け、床が低く高齢者や車椅子でも利用しやすい車両に変えた。新設区間では軌道敷に芝生を張るなど、騒音や振動対策も徹底した▲一番の売り物は、クルマに頼らずに済むダイヤ編成だ。運転間隔は最短10分に1本と都会並みで、終電も午後11時台になった。勤め帰りにちょっと一杯、が長引いたお父さんも助かる。将来は既存の路面電車と相互に乗り入れする計画もある▲ひところ、専用軌道をタイヤで走る新交通システムが大都市中心に導入された。だが、乗り換えの不便などから、どこも経営難が続き、優等生だった東京の「ゆりかもめ」もタイヤ脱落事故でつまずいた。高齢社会対策の切り札として、LRTへの視線は熱い▲富山市はLRT導入を、中心部が空洞化した街の構造を変えるきっかけにする。立山連峰をバックに走るLRTは見ものだが、それ目当てのファンばかりでも困る。電停で時刻表を写し取るお年寄りたちの姿に、ちょっと明るい未来がのぞく。
 毎日新聞「余録」2006年4月30日

●楽

 「体を休めること」。例:「ちょっこでも楽せんなん、体こわいてしもうがね」(少しでも楽なことをしないと体を壊してしまうよ」/「楽ばっかしとって体動かさんにゃんあかんねか」(なまくらしていてはダメだ)。

●落雁

 金沢の「長正殿」(ちょうせいでん)が有名だが、『おもしろ金沢学』(北國新聞社)には次のように書いてあった。

 北陸における落雁のルーツは越中・井波の板倉家だと考えられる。「加越能文庫」の文書によれば、板倉家初代は文明年間(1469〜1487)、山城国壬生(やましろのくにみぶ)の里で、米を砕いた粗粉(あらこ)で菓子を製し、時の帝に奉っていた。二代目が蓮如上人に従って越前・吉崎に来て、後に越中・井波に移り、瑞泉寺三世(蓮如上人二男)に仕えた。

 慶長6年(1601)、加賀藩の二代藩主前田利長が、徳川家康の関ヶ原戦勝を祝って献上した墨型(すみがた)菓子は、板倉家四代目が製造したものだ。五代藩主前田綱紀の時代に、六代目が有栖川親王に墨型菓子を奉ったところ、親王が御所に献上し、天皇から次の和歌を賜ったという。

「白山の雪より高き菓子の名は四方の千里に落る雁(かり)かな」

 墨型に黒白の胡麻を散らした意匠を田畑に落ちる雁と見立てたもので、ここから米の粗粉を用いる菓子を落雁と称するようになったという。これが事実なら、落雁という名称は北陸がルーツということになる。

 ちなみに、語源説がいろいろあるが、「うらさびしい」説がある。落雁の表にはいろいろな模様が浮き出ているが、裏は平板で何もない。それを見たある公卿いわく、「ああ、裏がさびしい、うらさびしい」、雁が沼に降り立つ風景を思い浮かべて命名した…と。

●…らち〜らっちゃ

 「…たち」。例:「わしらち」(私たち)・「子どもらち」(子どもたち)・「あのっさんらち、ちゃべちゃべとろくなことせんちゃ」(あの人たちはお節介な割にはろくなことをしないね)。

●ラッセル車

 11月になるとラッセル車の試運転が行われたというニュースが流れて冬の到来を思わせる。富山市上赤江のJR富山貨物駅構内富山運転センターで、ラッセル車のウイング(排雪翼)や線路内を除雪するフランジャー板の動きを点検。同駅を出発し、糸魚川駅間まで約3時間の走行で、ウイングの広がり具合や、線路上に除雪の障害になるものがないか、入念に調べる。降雪予想が20センチを超えると出動する。

●拉致(らち)

 日本海に面した富山は朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)による拉致の可能性がある。もっとも有名なのは1978(昭和53)年8月15日、富山県高岡市の雨晴海岸で起きた拉致未遂事件だ。アベックが4人組の男に襲われ、捉えられ、縛られた上、頭から布袋を被せられた。その状態で寝かされていたが、犬の鳴き声が聞こえた後、男たちはその場を離れ、2人は逃げ出して人家に助けを求め、難を逃れた。袋や猿ぐつわ、手錠などの遺留品は日本のものではなかった。蘇我ひとみさんはこの3日前に佐渡で拉致されていて、この事件は証拠品が残った最初の事件だったので、もっと追求すべきだったといわれる。

 この事件以後アベック拉致は行われていないと思われるが、福岡町荒屋敷の山田建治さん=当時(30)=の家族が「北朝鮮に拉致されたのではないか」として捜査を求めている。山田さんは1979年12月8日ごろの朝、自宅を出たまま不明になった。その後、高岡市伏木国分のJR越中国分駅そばの民家から「軒先に1週間以上車が止まっている」と高岡署に通報があった。山田さんのもので、付近を捜したが手掛かりはなかった。車にはキーがついており、財布や免許証などが置いてあった。山田さんは仕事帰りに、近くの砂浜を走るのが日課だったという。家族は失跡する理由がない、海のそばで行方が途切れている、拉致が集中した78年に近い−などの理由から北朝鮮関与の可能性があると主張。県警は「証拠がなく、否定も肯定もできない」としている。

 県内では工作員が上陸して捕まりそうになって自殺した事件や水中スクーターが発見される事件が起きている。

 03年に特定失踪者問題調査会で明らかになった中には新湊市出身の荒谷敏生さんが含まれていた。

 多くの拉致事件の首謀者である北朝鮮工作員辛光洙(シン・グァンス)は高岡で生まれ育ったという。

 「ハイ!ジャック」が飛行機で言えないように、富山で「あんたらち」と言えなくなってきた。

●…らと

 「…く」。例:「もっと深(ふか)らと掘らんと」(もっと深く掘らないと)。

●…らっしゃ

 「…らしい」。例:「なんちゅー可愛らっしゃいね」(可愛いね)。

●ラッセル車

 11月になると必ず「ラッセル車」のニュースが流れる。除雪用の機関車。

 最近ではほとんど雪が降らなくなった。

●ラブホテル

 8号線で金沢に行く途中、DAIKONというラブホテルを見つけた(見つけただけ)。どんなカップルが利用するかと思っただけでイマジネーションが掻き立てられた。きっとラブホテル名だけを調べて論文になるなと思った。内容と名前の違いを考えるのが論文をすばらしいものにすると思う。村上春樹は『村上朝日堂はいかにして鍛えられたか』で「日本マンション・ラブホテルの名前大賞が決まりました」という論考をしている。

 一人寂しく、インターネットで調べてみた。基本的にELLEやハイアット、ポルシェ、ベルサイユなどパクリが多く、全体にフランス語系が多い。8号線とかMANYO、雪国、湯の国というのが地域性を出している。ビュートというのがあるがこれは光岡自動車のクルマの名前だ。フリスコというのもあるが、これは「サンフランシスコ」という意味だが何故かわからない。

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○ら抜き言葉

 「ら抜き言葉」を非難する人が多いが、方言では関西、中部などで広く分布していたもので、富山でも普通に使っていた。東京だって対象の陶から昭和の初めにかけて使われ始め、戦後に特に増えただけなのだ。例:「見れっけ?」「起きれっけ?」「寝れっけ?」「来(こ)れっけ?」など。

●…られ〜…れ

 「…しなさい」で富山に特徴的な文末詞。例:「こっちぃ、こられ」(こっちへ来なさい)・「食べられ」(食べなさい)。

●…られん

 「…してはいけない」。例:「こっちぃ、こられん」(こっちへ来てはいけない)・「食べられん」(食べてはいけない)。

●乱

 「賑やかな歓迎」。例:「こんな乱、してもろてぇ気の毒な」(こんなに歓待してもらってありがとう)。

●らんかする

 「反対する」。

●頼成の森【らんじょうのもり】

 砺波市にある県民公園。1969年の第20回全国植樹祭のために造られた。全国森林浴の森百選の一つ。6月には国内最大級のハナショウブ園でハナショウブ祭が行われる。

●欄間

 座敷を飾る木彫の仕切。井波が木彫の町なので、宣伝に乗せられて盛んである。何しろ、家を建てる時は座敷を考え、仏間を考え、ついで欄間をどうするか考えるのが富山県民なのである。

 井波は江戸中期に瑞泉寺再建の時に京都東本願寺から派遣された御用彫刻師・前川三四郎の技が地元に伝わって彫刻の町となった。明治以降に作られるようになった欄間だけでなく、最近では天神様も彫るようになった。


英語

数字

序文

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