金川 欣二:マックde記号論(言語学のお散歩)


 

笑説 越中語大辞典



●能越【のうえつ】

 「能登と越中」。「加越能」という言葉があるからといって「越能」にならないのが不思議。

●能越道

 「能越道」というと北陸自動車道の小矢部砺波JCT(ジャンクション)−高岡ICを指すが、能登の輪島市をまで伸びる約百キロの自動車専用道路。あまりにクルマが通らないので2002年12月には無料化する実験も行われ、2004年に無料になった。

●農協

 JAのことだが、誰もJAとは呼ばない。高岡に厚生連高岡病院もあるが、昔の「農協病院」で通じる。

●のーなる

 「なくなる」。例:「お金がのうなってしもた」(お金がなくなってしまった)。

●ノーベル賞

 考えてみれば富山はノーベル賞に一番近いかもしれない。87年に小さい頃富山に住んでいた利根川進が「抗体の多様性生成の遺伝的原理」の発見で、ノーベル医学生理学賞を受賞した。富山生まれ、八人町小学校、芝園中学、富山中部高校出身の田中耕一が2002年に「たんぱく質のような生体高分子を研究する強力な分析方法の研究」で化学賞を受賞した。「堅実さと粘り強さは富山の地のおかげ」とも話した。「寝耳に水」の受賞だったので、母親は富山弁で「ほんとけ(本当か)」と驚いた。そして、同年、物理学賞を取った小柴昌俊が作ったカミオカンデは富山県から近い岐阜県神岡町にある施設だ(今村昌平の『赤い橋の下のぬるい水』の中にもカミオカンデが出てきて、小柴さんらしい人が話す場面がある)。

 国道41号線を「ノーベル街道」という人もいる。高山市には小学三年から高校三年までを同市で過ごした白川英樹、41号の終着点となる名古屋市では野依良治が名古屋大教授を務めている。富山県総合政策課は「日本人受賞者12人のうち4人が、出世魚と呼ばれるブリの街道沿いの市町にかかわりがあった。『出世街道で41(よい)道』などのキャッチフレーズでアピールしていけたら」と売り出していこうという考えた。そして、03年11月10日、「ノーベル街道」としてPRする記念モニュメントが県民会館正面南側に完成した。日本芸術院賞受賞者の金工家の大角勲=高岡市守護町=が、県の依頼を受けて制作した。モニュメントはブロンズ製で作品名は「縄魂弥才(じょうこんやさい)」。「和魂洋才」をもじって「縄文の心、弥生の頭」ということなのだろう。

 2003年には「ぶりノーベル出世街道」として「ぶり街道」とつなげてPRすることになった。

 もう一人、ノーベル賞と関係がある人がいる。城端町出身の稲塚権次郎(1897-1988)である。稲塚は県立農学校(現福野高)から東京帝大農学実科(現東大農学部)へ進み、農商務省農事試験場で水稲育種に従事。38年には中国へ渡り、華北産業科学研究所で小麦やアワ、トウモロコシなどの育成に携わった。戦後は農林省職員として北陸の農地開発や食糧増産計画などを指導した。岩手県農事試験場時代の35年には、丈が短く倒れにくい「小麦農林10号」を開発。これがアメリカに持ち帰られ、後にノーベル平和賞を受けたノーマン・ボーローグ博士による多収性小麦の研究につながった。“緑の革命”と呼ばれるほど驚異的な生産量の拡大が飢餓の解消に貢献し、稲塚の名も世界に広がった。

 ノーベル賞の関係は他にもある。「イグ・ノーベル賞」(noble“高貴な”の反対語ignoble“愚かな、下品な”の駄ジャレから“Ig Nobel”とした)の化学賞を、2003年6月に金沢大理学部の広瀬幸雄教授が受賞したのである。カラスなどを寄せつけない特殊な銅合金を開発した。兼六園の日本武尊の像にはなぜかフンが少ないことを金沢大学の学生時代に知り、研究を続けたのだ。その共同開発相手は小杉の「北陸テクノ」という会社である。「イグ・ノーベル賞」は米国ハーバード大学系出版社が発行している科学ユーモア誌「The Annuals of Improbable Research」(ありえない科学年報)が主催しているもので、世界で最も珍妙な科学研究に贈られる賞。ノーベル賞(Nobel prize)のパロディ版といわれている。1997年にバンダイの「たまごっち」が経済学賞を、2002年にタカラの「バウリンガル」(犬語翻訳機)が平和賞を受賞している。

●『納棺夫日記』(桂書房→文春文庫)

 富山の詩人・青木新門の著。「納棺夫」というのは青木の造語でそれまでは親戚縁者が酒を飲みながら死体を綺麗にして棺桶に納めたものだった。これを職に選んだ著者でなければ語れない生と死と死者をとりまく人間の諸相を冷静に思索し哲学し、詩情豊かに描いている。2002年には“Coffinman”(Buddhist Education Center)として英訳もされた。

●…のが

 「…のもの」。例:「わしのがいからね」(私のものだからね)。

●野口五郎岳

 北アルプスの南側に位置する山。歌手の野口五郎がここから名前を採ったので有名。「五郎」とは「ゴロ、岩場」のことで、黒部五郎岳などもあって「〜五郎岳」というのは普通名詞。語源に関しては正しいかどうか分からないが谷有二『山名の不思議』(平凡社ライブラリー)に「野口五郎岳と黒部五郎岳」という章がある。誰か演歌歌手で「黒部五郎」が出ないかな?

●のける

 「抜ける、除外する」。例:「おらのが、のけとったじゃ」(僕のが抜けていた)/「それ好きやから、のけといて」。

●野田佳彦

 2011年8月に総理大臣になった。父親は八尾出身の自衛官だった。代表選の終わってからのスピーチで、選挙区は千葉なのだが「父は富山県農家の6人兄弟の末っ子。 母は千葉の農家の11人兄弟の末っ子。その長男がわたし。シティーボーイに見えない理由はそこかも」と話した。

●のっこむ

 「呑む」。例:「骨、のっこんでしもたら、気持ち悪いがいぜ」・「薬、ちゃんとのっこまれんか」。

●のっぺ(汁)

 呉東で使うが、呉西では「あんかけ」。

●のふとい

 「のふとい」は「温かい」を意味する宇奈月あたりの言葉。11月に黒部峡谷鉄道の主催で「のふとい」祭が開かれ、イワナやアユの塩焼きの販売もあり、観光客らは、紅葉を見ながら、食欲の秋を楽しむ。

●のまんか

 「飲まないか」。

●のぼせもん

 「のぼせた人」で仕事以外の物事に浮かれる者を揶揄する言葉。似たような言葉に「みゃらくもん・みぁらくもん」がある。例:「この、のぼせもんがぁ」(このアホが)。

●海苔【のり】

 味付け海苔と焼き海苔のどちらをおにぎりに使うかは鈴鹿山脈で分かれる。亀山は両方が拮抗しているようだ。関西は味付け海苔である。富山は関東と同じ焼き海苔である。もちろん、海苔ではなく、とろろ昆布のおにぎりもあるのが富山なのだが。

●海苔巻き

 関西では「巻き寿司」、関東では「海苔巻き」というが、富山では「海苔巻き」である。「巻き寿司」というのは後から学んだ言葉だ。ただ、関東の「巻き寿司」は細巻きのことが多いが、富山では太巻きである。でも、「太巻き」とは言わなかった。

●のりつけほーせそっとこーか

 ふくろうの鳴き声で、真田信治・友定賢治『地方別方言語源辞典』(東京堂出版)の「のりつけhーせー」(出雲・日本海側各地)の中に富山方言として出てくる。

●のろま

 「鈍(のろ)い人」で、罵倒語で使われる。

●のんの

 幼児語で「観音様」から「仏様」。実は方言ではない。『大辞林』にも「のの」で「日・月・神・仏など、尊ぶべきものをさしていう幼児語。ののさま」として出ている。浄瑠璃の『門出八島』には「音せでおよれ、―へ参ろ」というのが出ているという。「如来」の意味の「如如(にょにょ)」、「祈る」という意味の「のむ」からともいう。例:「のんのはん、はい」(観音様、どうぞ)。


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序文

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