金川 欣二:マックde記号論(言語学のお散歩)


 

笑説 越中語大辞典



●…ねか

 「…じゃないか」。例:「あんた、おらのこと好きや言うたねか」(あなたは僕のことを好きだと言ったじゃないですか)。

●ねき

 「根本(ねもと)」。真田信治・友定賢治『地方別方言語源辞典』(東京堂出版)には「ねき」で「そば、近く」というが、富山でもこの意味で使うと思う。

●ねぎたん

 長さが40センチ、このうち白い部分(軟白部)が20センチ以上というコンパクトな白ネギ。費者にとって(1)短いので買い物袋に納まる(2)少人数の家庭でも食べ切れ、ごみの減量化につながる(3)冷蔵庫にも入りやすい、などの便利な点がある。生産者にとっても、(1)夏場の早出し品種なので春ネギと夏秋ネギの間に出荷でき、ネギの栽培期間が広がる(2)白ネギに比べ、定植時に土を深く掘る必要がない(3)軟白部を伸長させるための「土寄せ」回数も少なくてすむ(4)栽培期間が短くなることで農薬の使用回数も減り省力化にもつながる、などの利点がある。2007年には夏と晩秋に収穫できる2品種をそれぞれ「越中なつ小町」「越中ふゆ小町」が加わった。

●ねぐさい

 「(腐敗して)臭い」。例:「おこわ、ねぐそーなってしもとるねけ」(赤飯が腐敗してしまっている)。

●…ねけ

 「…じゃないですか」。砺波などでは「〜ないけ」という(「あかんないけ」)。例:「間におうたねけ」(間にあったじゃないですか)。

●ねこ

 小さな炬燵。猫の形をしているからで黒い50センチ四方の丸形の炬燵。猫のことを炬燵とは言わない。

●ネコ電車

 万葉線のネコの絵が描いてある電車で子どもたちに人気がある。

●ネコ褒め

 五箇山では冬場に思わぬ吹雪に遭うことがある。一番近い家に転がり込み、止むのを待つ。家人と世間話をするが、見知らぬ相手だけに会話はとぎれがちになる。そんな時に手近な物から一つ一つ褒めていき、ついにはネコまで褒めて愛想を言う羽目になる。これを「ネコ褒め」という。更に転じて雪で帰宅できず、しかたなく行った先で泊まることも指す。

 五箇山の言葉だというが、「ネコ褒めセールス」は富山の売薬の特許みたいなものだ。

●猫又山

 宇奈月にも魚津、宇奈月、上市の境にもある山。谷川健一『続 日本の地名』(岩波新書)には「富山県の猫又山は、たんなる伝承ではなく、実在の大猫がいて、人をしばしばおそうことがあったからつけられた地名である」と紹介されている。

●ねちゃねちゃ

 「べたべたした」さま。例:「なんけぇ、ソフト食べて口の回り、ねちゃねちゃしとっねけ」。

●ねつおくり

 江戸時代から稲熱(イモチ)病など病害虫を払うために「ねつおくり」をしていた。梅雨のころ発生しやすいイモチ病などを防ごうと始まったとされ、毎年「土用の三番(土用入り三日目)」に行われる。かつては旧福光町内など各地にあったが、昔ながらの形で残っているのは、南砺市荒木地区だけという。小学生ら約百人は、色鮮やかな短冊を飾ったササを元気よく振って稲穂をおはらいし、豊年満作を願った。行事は、約6キロのコースを巡回して行われた。児童らはときどき、水田わきに立ち止まって一列に並ぶと、背丈50センチほどに伸びた稲穂に向かって「ねーつおくるばーい、ねーつおくるばーい」とはやし立てる。

 旧福光町では7月22日、23日に子供らが「熱送るワイ」と太鼓を叩いて囃し、五色の短冊の笹竹で青田をはらって「じじ」「ばば」と呼ぶ人形を乗せた舟を担いで町内を練り歩く。

●熱気球

 砺波平野は熱気球のメッカになっている。この辺りは庄川の扇状地で、散居村が広がり、家と家の間に道路が存在するため、網目のように道路があり、熱気球の回収には非常に適した土地なのである。

●ねにする

 「根に持つ」から「気にする」。「根になる」は「気になる」。例:「そんなだらなことぉ、いつまでねにもっとるがいね」(そんな馬鹿なこといつまで気にしているんですか)。

●ねになる

 「ねにする」の自動詞で「気になる」。例:「新婚で嫁はんのことぉ、ねになって、仕事もでっきんちゃ」。

●ねね

 「赤ちゃん」のこと。「ねんね」などとやわなことはいわない。例:「あらぁ、どこのねねね?」「大塚のねねね」。

●ねぶか

 「根深」から「葱」。富山は圧倒的に白ネギである。

●ネブタ

 滑川の海岸沿いに「ネブタ流し」がある。日本海側では最南端の「ねぶた」といわれる。青竹を芯にして、藁(わら)と筵(むしろ)でくるんで、荒縄で縛った、高さ4メートルの巨大なたいまつ。胴体に茄子や胡瓜などに目鼻を刻んで家族の息を吹きかけた人形(ひとがた)が刺され、住民が地域を練り歩いた後に、海岸に据え付け、先端に火を点けて沖に流す。

 江戸時代からの行事のようで、眠気と一緒に汚れを海に流す意味が込められているという。「ネブタ流しの日を境に昼寝をしてはいけない」という言い伝えもある。

●ねぶる

 「眠る」。

●ねまりかいもち

 「婚礼の翌日に近所に配る餅」。つまり、「寝たことを示すおはぎ」ということだろう。

●ねまる

 「座る」で「寝る」という意味で使うこともある。関西方言なのだが、古語にも出てくる。真田信治・友定賢治『地方別方言語源辞典』(東京堂出版)では北海道・青森・岩手方言として出てくるが、北陸でも使う。「ねむる・ねぶる」(眠る)が転じたとする説、「粘る」が転じて地に着く姿勢をいうようになったと言う説もある。「だまってすわる」の意味では『史記抄』に「ねまりて物を思案する」、「くつろいでいる」の意味では『奥の細道』に「涼しさをわが宿にしてねまるなり」と出てくる。例:「そんなとこにねまっとらんと、ちょっこ前ぇ出られま」(そんなところに座ってないで、ちょっと前へ出て下さい)。

 堀井令以知『ことばの由来』(岩波新書)には次のように書いてある。

 男があぐらをかくのに対応する昔の女性の座り方には、横座りするネマルがある。百人一首のカルタの図柄に見られるような十二単を着た平安時代の女官にとっては、くつろいだ座り方であったろう。室町時代から女性が使用した、尻をオイドとかイシキ(居敷)ということばはその座り方と関係している。日本海沿岸ではそのネマルが一般的にスワルことをさすというところもある。

●練合【ねりや】

 商船高専のあるところだが、誰も読んでくれない。どころか、うちの先生でも「ねりあい」と呼んでいた。

●ねわ〜ねまき

 「寝間着」。

●ねんさい

 「ねくさい」?で「「腐った臭いがする」。例:「このとっぺ、ちょっこねんさぁなっとから止められ」(この豆腐、ちょっと腐った臭いがするから止めなさい)。

●…年生

 阪神のような大学「…回生」という言い方は北陸ではしない。


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