金川 欣二:マックde記号論(言語学のお散歩)


 

笑説 越中語大辞典



●へーき〜へーけ

 「平気」ではなくて「贔屓(ひいき)」。例:「あんた、どこのチームへーけしとっがね」(あなたの贔屓のチームはどこですか)・「わし、源氏のへーけやけど、あんた平家のへーけやね」。

●平成の大合併

 「ひらなみ市」って「ひらがな市」だと思っていた。

 東京に「大田区」というのがある。「太田区」ではない理由は「大森」と「蒲田」が一緒になったためである。

 こんないいかげんな命名がまかり通ってはいけない。柳田國男は『地名の研究』でいろいろな市町村名を槍玉にしているが、木曽にあった「読書村」(よみかきむら)もひどかった。合併前の与川(よがわ)、三留野(みどの)、柿其(かきぞれ)、の先頭4文字の合成が「読書」の由来だという。

 楠原祐介『こんな市名はもういらない!』(東京堂出版)によれば、合併で新市名を命名するのは「従来の名前による」と書かれている地方自治法第3条違反ではないかという。総務省のパンフレットには「市町村合併は男女の結婚と同じで、お互い平等な関係です」と書かれている。

地方自治法
第3条 地方公共団体の名称は、従来の名称による。
 2 都道府県の名称を変更しようとするときは、法律でこれを定める。
 3 都道府県以外の地方公共団体の名称を変更しようとするときは、この法律に特別の定めのあるものを除くほか、条例でこれを定める。
 4 地方公共団体の長は、前項の規定により当該地方公共団体の名称を変更しようとするときは、あらかじめ都道府県知事に協議しなければならない。
 5 地方公共団体は、第3項の規定により条例を制定し又は改廃したときは、直ちに都道府県知事に当該地方公共団体の変更後の名称及び名称を変更する日を報告しなければならない。
 6 都道府県知事は、前項の規定による報告があったときは、直ちにその旨を総務大臣に通知しなければならない。
 7 前項の規定による通知を受けたときは、総務大臣は、直ちにその旨を告示するとともに、これを国の関係行政機関の長に通知しなければならない。

 名称制定の手続は次の通り。

○新設合併の場合・・・地方自治法第7条の規定により、関係市町村の廃置分合(合併)の申請に基づき、都道府県議会の議決を経て知事が定め、総務大臣が告示することにより効力を生じることになる。
○編入合併の場合・・・編入合併に伴って市町村の名称を変更する場合は、地方自治法第3条の規定により、あらかじめ都道府県知事に協議し、条例で定める必要がある。

 富山では「醍醐村」という悪例が残っている。

 歴史的意義を忘れて今現在の市長や市議や市民の勝手で名前をつけられてはたまらない。

 なお、合併で同じ名前の町が生まれることになる。黒部市・宇奈月町・入善町・朝日町合併では1市3町の8カ所で重なっている字名になる。一市三町では黒部市と入善町にある「板屋」をはじめ▽窪田(黒部、朝日)▽熊野(黒部、宇奈月)▽五郎八(黒部、入善)▽高橋(黒部、朝日)▽高畠(入善、朝日)▽下山(入善、朝日)▽舟見(宇奈月、入善)−で字が同じである。これを地域住民の意向を尊重しながら調整することになっていたが、入善町の離脱で解散してしまった。

 福野、平など8町村でつくる砺波地域市町村合併協議会の新市名候補選考小委員会は新市名の最終候補を「越南(えつなん)市」「光南(こうなん)市」「南砺(なんと)市」「八乙女(やおとめ)市」(50音順)の4つに絞った。選考理由は、越南市が「越中の南に位置する特徴を示し、地域の一体感が出る」、光南市が「新市が光り輝くよう、願いや期待を込めている」、南砺市が「地域が一目瞭然(りょうぜん)。住民に違和感がなく親しみやすい」、八乙女市が「八つの町村で合併した歴史を名称に残し、ソフトなイメージがある」など。しかし、「越南市」はベトナムのことなので、ダメだし、「光南市」は愛知県に「江南市」があってダメだ。「八乙女市」は福岡県の「八女(やめ)市」と紛らわしいし、「南砺市」というと「南都」、つまり「北都」(京都)に対する奈良というイメージがある。結局、「南砺市」に決定した。

 無難にまとめようとしても無理がある。川口市などは新市名が「武南市」と決まってから合併が破綻した。

 ただ、こうした新地名を、郵便配達区画の見直し(新湊では旧町内名が消えて新町内名になってしまった)による地名変更と同じように未来に負の財産を残してはいけない。

 市町村制が施行された明治22年に県内は2市31町238村で構成されていた。新「高岡市」と「射水市」が発足した2005年に、県内は10市5町1村となり、県西部
には町村がなくなった。

●ベーゼンドルファー

 入善コスモホールにはベーゼンドルファーのピアノが置いてある。しかも音響がいいので、ここでCDを録音する人も多い。

 永六輔の『学校ごっこ』(日本放送出版協会)に、あるホールでのコンサートの前に「失礼ですが、中村八大さんは芸大でしたよね」と聞かれて、なんの気なしに「いいえ、彼は早稲田です」と答えたら、本番にはピアノが国産のピアノに代わっていたという。ホールの人に聞いたら「あのピアノは、芸大出身者に限る、と規則で決まっているんです」といったという。

 コスモホールはそんなケチなことはいわない。積極的に貸してくれるだけでなく、録音の手助けをするイベントも開催している。立派だ。

●へがへが

 小野正弘の『オノマトペがあるから日本語は楽しい』(平凡社新書)には福井の代表的なオノマトペとしてあげているが、富山でも使う。「頼りなく弱々しいさま」で「針金がはがへがにまがる」などと使う。

●ベガーズ・バンケット

 富山の進開ホテル近くにあった、カラオケなどの複合施設。ローリング・ストーンズの68年のアルバム『ベガーズ・バンケット』から採っている。

●へがんちょこ〜ひがんちょこ

 「傾いた、歪んだ」。例:「絵ぇ、へがんちょこになってしもとるねけ」(絵が曲がってしまっているではないですか)。

●へくさんぼ

 「カメムシ」。臭いがひどく、僕の一番苦手な虫だが、山の中にいかないと見かけない。

●ペケ

 とはあまり使わない。東京で「ビリ」、大阪で「×」の印をいう時の言葉だが、どちらもあまり使わない。「ビリ」は「ゲット」というし、「×」は「バツ」だ。なお、「ペケ」の語源については、中国語の「不可(プケー)」、マレー語の pergi(あっちへ行け)などの諸説あるが不明。

●へごへご

 「ぐずぐず」言う時に使う。

●へしこい

 「馬鹿な、拍子抜けの、ちょろい」。例:「へしこいやっちゃ」(愚かな奴だ)。

●へしない

 「まだるっこしい」や「待ちぼうけで疲れる」。金沢でも使う。広辞苑第六版に初めて載る。例:「へしないやり方やから終わらんがいねけ」(まだるっこしいやり方だから終わらないんだろう)・「ありゃ、何ちゅー、へしないやっちゃ」(あれは何というまだるこしい奴だろう)・「全然来んからへしなーなってくっちゃ」(全然来ないから待ちくたびれてしまった)。

●ヘチマ

 大島町が特産にしていて、「へちまの里」がある。ヘチマは収穫された後、4日間ほど水槽につけて皮をむいて、約3日間天日干しされる。最近では、吸湿性の良さから靴の中敷きや汗取り用マットなどに加工される。

●へち曲がる〜へん曲がる

 「曲がる、歪む」。例:「このサシ(定規)へち曲がってしもとるねけ」。

●べっこ

 「鼈甲」から「煮こごり」「寒天」。お祭りに母はべっこ(寒天を砂糖醤油で煮て卵を流し込んだ)を作った。僕は嫌いだが、立川志の輔は久しぶりに食べたら昔を思い出したというから、人によっては富山のソウルフードなのだろう。「柚餅子」(ゆべし)に似ていることから「ゆべし」ということもある。

●べちゃべちゃ

 「びちゃびちゃ」。

●ぺっちゃるこい〜べっちゃるこい

 「平たい。平べったい」。

●へっつい

 「かまど」なのだが「竈」(かまど)も知らない人が増えた。かまどを守る神様を「竈つ霊」や「竈つ火」と書いて〈へつひ〉というがこれが語源。

●ベニズワイガニ

 秋到来を知らせる富山湾の代表的な蟹。「赤い色は人を興奮させる」というのは本当だ。名の通り体が朱色をしている。11月解禁のズワイガニより色鮮やかで、競り場に並ぶ姿は美しく映える。9月1日午前零時に解禁となるので、新湊沖35キロ、水深約800〜1200メートルにカニかごを沈め、2日朝に引き揚げ、漁港に並ぶ(境港などでは解禁が同じでも5日前後に入港)。漁は12〜1月がピークで翌年5月末まで続く。

 「ズワイガニ」とは別種で、「ズワイモドキ」とか「ズワイガニの代用品」などと言われ、不当におとしめられていた。ズワイに比べ、確かに水っぽく、身入りも少ない。水分が多いことから、新湊では「水ガニ」とも呼ぶ。でも、富山湾の深層水で育ったベニズワイは、ズワイに劣らず味がいい。何より、値段がズワイの十分の一程度と手ごろだ。

 『聞き書 富山の食事』(農文協)にはベニズワイガニを使った料理が出てこない。このカニは深海に棲み、昭和初期、通常の漁法では獲れなかった。漁業としては1941年、富山県水産講習所の調査船が310尾獲ったのが最初とされる。61年、 富山県魚津市の漁業者・浜多寅松が「かご漁法」を考案した。それまで、網を張ってカニの足やハサミを引っ掛けて捕獲する「刺し網漁法」が行われていたが、網にからまったカニの取り外しや破れた網の修繕などで作業効率が悪く、それに伴うカニの著しい痛みも問題点であった。餌をカゴに入れて海底に沈め、匂いなどでおびき寄せてカゴに入ったものを漁獲する「かご漁法」はこれらの問題点を一挙に解決。その後急速に日本各地だけでなく、世界中の漁場に普及していった。2000年の全国の漁獲量2万5千トンのうち、山陰沖が半分を占める。鳥取の境港が日本一を誇り、富山は680トン。

 新湊漁協では2003年から「最上級」だけにタグをつけるようになった。プラスチック製のタグの札の部分は縦3センチ、横2センチで、捕った漁業者が一目で分かるように、屋号などのひらがな1文字と、「富山県新湊漁港」の文字も入っている。 どのカニにタグを付けるかは漁業者の裁量だが、「上物と認めるものだけ」と決めており、漁協でもセリ前に厳しいチェックをする。そのため、初日の9月2日、タグがついたカニは、3500匹のうちわずか25匹だった。 タグそのものや使用するインクも食品衛生法の基準をクリアしているため、カニをゆでる際も、タグをつけたままでOKという。ちなみに、ズワイガニはすでに2002年から白いタグを付けている。

 2003年10月から「カニ給食」が始まった。新湊漁協が「カニのおいしさを知ってもらおう」と新湊と氷見の6年生1人に1匹ずつ給食でプレゼントした。カニは塩ゆでされたオスで、両足を広げると幅50―60センチで子供たちは漁協関係者から身の取り出し方を聞いた後、黙々と旬の味覚を楽しんだ。朝日の全国版に載るなど、ニュースでも大きく取り上げられ、大いにPRになった。

 読売新聞の「よみうり寸評」(夕刊)は次のように書いていた。

先日の朝刊に載った子供たちの笑顔が忘れられない。飽食の世の子らにしても、これはうれしかろう。まして戦後の貧しい学校給食を思えば夢のようだ。そんな風に思うわが身を笑いつつ、ひもじかった時代を知るものを笑うなかれと言いたい◆ベニズワイは超高価なズワイとは無論違う。が、それにしても学校給食としては最豪華のおもむきがある◆富山では、新鮮な魚を「キトキト」と表現する。カニもそういうのだろうか。富山湾産のうれしい海の幸をプレゼントした地元漁協に拍手する

 2004年から「新湊カニかにまつり」が開かれるようになった。

●へねる

 「ひねた」。例:「なんちゅー、へねた子ね」(何と言う大人びた子でしょうか)。

●へぼ〜ひぼ

 「難癖」。「へぼつける」というのは「難癖をつける」。例:「オラのホームページにへぼ、つけんなまぁ」。

●〜へや

 新湊の昔の方言では文末詞として「〜へや」をつけたというが、今は誰も使っていない。僕らの世代では「〜え(ん)や」というのは聞いたことがある。例:「あんた、行かれへや」(あなた、お行きなさいよ)。

●ヘルスセンター

 昔、船橋にヘルスセンターというのができてから全国的にブームになったことがある。金沢には卯辰山に金沢ヘルスセンターができて富山県からもたくさんの人が訪れた。動物園には珍しい動物がいっぱいだった。結局、倒産して可哀想な動物達は「石川動物園」として管理されることになった。ヘルスセンター跡の動物園に行くと、昔の面影を残していたので(正直)涙が出てきた。今は別の場所に広々とした「いしかわ動物園」ができた。

 富山には呉羽山に富山ヘルスセンターというができた。特徴はなかったのだが、健全そうなので学校や児童会からよく行ったものだった。ゲームセンターも大浴場もプールもあった。今はなくなって富山観光ホテル・呉羽山温泉になっている。

●ベルばら米

 富山県こしひかりを使って「ベルばら(ベルサイユのばら)米」として売っている会社がある。なでしこ米倶楽部という会社で、理由は「ベルサイユのばらは何のお米にしようと最初に話をしていたら自然と、富山こしひかりのイメージが浮かびました。新潟は最近不安定で気候に左右されやすく安定した農家を探し出すのは非常に難しいです。富山は、味も土地も安定しているし、味は新潟に負けないおいしさ。13年前の不作のときも影響が無かった実績があり、これに決定!となりました」と裏に書いてある。マリー・アントワネットは「パンがなければ米を食べれば」と言っているようだ。

 ちなみに「あきたこまち」は「クリドラ(クリスタルドラゴン)米として売られている。

●ヘルン

 小泉八雲、ラフカディオ・ハーンの家紋の青鷺(あおさぎ)は英語で「ヘロン」と発音し、これもヘルンの呼称に由来しているようだ。ハ−ンは「ハ−ン」の「−」の長音を嫌ったともいわれている。このヘルンの呼称を採用して「ヘルン文庫」が富大にある。

 大正13年の旧制富山高校開校に無糧創設者の馬場はると初代校長の南日恒太郎は世界に目を向けた教育の必要性を感じていた。当時、ハーンの遺族は蔵書を四散させない方策を模索していた。教え子に富山出身の田部(たなべ)隆次がいて、兄の南日恒太郎に富山で蔵書を保存したいと申し出た。お金は馬場はるが提供し、手書き原稿1200枚、蔵書約2500点を寄贈した。富山高校の10周年の昭和10年に馬場家の寄付で敷地内に「八雲図書館」を建設し、「富山高等学校八雲会」が組織された。蔵書の8割に何らかの書き込みがあり、島根大学などで全体の3分の2がマイクロフィルムに収められている。ここからのコピーもでき、2003年までに30冊分ができた。

 なお、八雲会は松江、熊本、東京などにもあり、平川祐弘が中心となっている。

 西江雅之先生の『伝説のアメリカン・ヒーロー』(岩波)にもハーンの話が出てくるが、クレオールということで注目されるのである。

 富山とヘルンとの関係はヘルン文庫以外はない。

●偏差値

 高校の偏差値など分かる訳ないが、おおよそ次のようである。参考にしてはいけない。高専は番外。

高岡    中部
富山

砺波    魚津
高岡南   富山東

(商船高専  工業高専)

福野    呉羽   富山南

●へんちゃぶれる

 「つぶれる」。「へんつぶす」は「つぶす」。例:「このパン、へんちゃぶれてしもとるねけ」・「あんな奴、へんつぶしたろ」。


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数字

序文

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