金川 欣二:マックde記号論(言語学のお散歩) 

笑説 越中語大辞典


本で読む富山


 富山に関係のありそうな本だけをあげておく。定義が難しくて文学といえないものもあるかもしれないし、他にもあると思うが…。また、小谷真理(こたに・まり)のように富山県出身だが、富山に関連した本がない(と思う)作家もいる。金沢に対して極端に少ないのが特徴かも知れない。金沢市が出している『文学への旅 金沢・名作の舞台』などを見れば歴然である。

 なお、2002年に八木文庫が県立図書館に完成して富山の本の多くが読めるうになる。●富山県文芸地図 ●とやまの本 

  

  • 伊能忠敬『測量日記』(富山県)…新湊の算術家・石黒信由と出会ったことは有名。
  • 芭蕉『奥の細道』
  • 金森敦子『関所抜け 江戸の女たちの冒険』晶文社…主人公は本庄の有力商人の家に生まれた裕福なオバサンとその女友達の船問屋の奥さん。「講」で順番を引き当てた組と違ってデラックスツアーでオバサンのひとりが克明な金銭記録をつけていたところからふたりの旅の実相が分かった。一行のルートは越後〜善光寺〜富山〜金沢〜永平寺〜京都〜大阪〜丸亀〜金毘羅〜高野山〜奈良〜伊勢〜桑名〜鎌倉〜江戸〜日光〜桑折〜横手、この間151日、全行程は芭蕉の奥の細道の450里をはるかにうわまわる780里。
  • 向笠千恵子『日本の食材 おいしい旅』(集英社新書)…「富山名物、鱒ずしの味比べ」「富山湾の夏の幸・白えびの福だんご」の章がある。
  • ブルウノ・タウト『タウトの日記』(飛騨から北陸)…この辺りを「日本でももっとも興味のある区間」 と称している。
  • 絲山秋子『不愉快な本の続編』(新潮社)…「盗む」の章がまるごと富山である。県立近代美術館を褒めちぎっている。
  • 山本一力『かんじき飛脚』(親不知など)…加賀藩の命運は付きに3度金沢と江戸を往来する三度飛脚たちにかかっていた。「加賀藩の御内室のために密丸を10日以内に運べ!」だが、それを阻もうとする者たちが飛脚の命を狙い動き始めた。無事に役目を果たすことができるのか?金沢から江戸の145里の冬道を走る飛脚の苦労は並大抵ではない。裏切り者や飛脚の命を狙う者、決められた期限、そして過酷な道のり。『走れ、メロス』のような興奮!
  • 村上龍『限りなく透明に近いブルー』…主人公「リュウ」の仲間の「ヨシヤマ」の出身地が富山。「リュウ」の部屋で「ヨシヤマ」が「あれから富山に帰ったよ。レイ子から聞いたやろ? リュウのとこ行った後や、おふくろさんが死んだんや、聞きいてたやろ?」という。
  • 村上春樹『ノルウェイの森』…主人公「僕」が「緑」と最初に出会った時に「金沢から能登半島をぐるっとまわってね、新潟まで行った」という。
  • 清水義範『ニッポン見聞録』…目次や章の扉に「屏風のむこうに越中冨士」となっていて、何ごとかと思ったが、「屏風のむこうに越中富山」の間違いらしい。富山県全体を実によくまとめた紀行文になっている。
  • 新田二郎『薬師岳遭難』…1963年に起きた愛知大生13人の遭難をテーマにした小説。
  • 畠山重篤『日本〈汽水〉紀行』…畠山は「森は海の恋人」のキャッチフレーズを掲げ、汽水域で働く漁師を「汽水人」と名付け、漁民の手で川の上流に広葉樹の森を育てる運動を広めた。「想像通り、富山湾は大汽水域であった」と記す。新湊漁協が庄川源流部で森づくりに積極的にかかわっていると書いている。黒部川のダム排砂に関して「見た目は清流なのだが、どこか河口はヘドロ臭いのが気に掛かる」という。
  • 泉鏡花『湯女の魂』(朝日町・小川温泉)…主人公・小宮山の友人を思うあまり体を壊した湯女・お雪が怪しげな老女に魂を抜かれてしまう。小宮山はその魂をことづかって東京へ帰る。鏡花の『高野聖』は敦賀が舞台だが、富山の薬売りが出てきて蘆毛の馬にされてしまう。
  • 石川達三『風にそよぐ葦』…細川嘉六の郷里の富山県泊町の旅館「紋左」に《改造》《中央公論》編集者や研究者を招待したさい開いた宴会の1枚の写真を発見した。特高はこの会合を共産党再建の会議と決めつけ、改造社、中央公論社、日本評論社、岩波書店、朝日新聞社などの編集者を検挙し、拷問により自白を強要した泊共産党再建事件(泊事件)があったが、ここから発展した横浜事件を扱った長編小説。評論家の清原節雄が出版社の社長、葦沢悠平に「眼の見える者は眼をつぶされ、口の利ける者は口を封じられる時代だ」と語る。ふたりはそれぞれ、「暗黒日記」の著者で評論家の清沢洌(きよし)、中央公論社の元社長・嶋中雄作の二人がモデルといわれる。
  • 泉鏡花「黒百合」…1899年に新聞に掲載された。成政と早百合姫の伝説を下敷きにした作品で伝奇的な色彩が強い。富山と異郷「石滝」を舞台に話は展開する。東四十物町に住む富山県知事(架空の人物)の娘・勇美子が主人公。勇美子はかねがね立山に咲く黒百合を手に入れたいと熱望していたが、手に入ったのは…。立山の洪水が神通川で出てきて市街は湖のようになって総曲輪や桜木町も水没してしまう、という不自然さがある小説。
  • 柏原兵三『長い道』(入善町)…藤子不二雄Aによって『少年時代』として漫画化され、後に映画化された。
  • 佐多稲子「水」(入善町)…1962年の短編小説で「幾代が中学の時、入善の紡績工場に働いている姉からの送金で…」。
  • 内田康夫…名探偵・浅見光彦シリーズで高岡市の釣り鐘を描いた『鐘』、朝日町のひすいを描いた『朝日殺人事件』、越中富山の薬売りの死体が舞鶴で発見された事件の『蜃気楼』、『透明な遺書』(福島県喜多方市と富山市が舞台)など4作品あるが、八尾でも執筆準備中(幻冬社)。
  • 銭屋五兵衛『東巡紀行』(宇奈月町)…善光寺参詣と日光参拝を目的とした紀行文で相本橋を通り、「此辺の風景、山水の容落唐景の如し」。
  • 志賀直哉『早春の旅』(宇奈月町)…次男直吉との親子旅行を描いている。延対寺荘に泊まった。
  • 檀一雄「尼僧殺し」(宇奈月町)…壇は1949年に宇奈月町の善巧寺に、友人の雪山俊之をたよって滞在したが、この時に起きた猟奇事件に基づいて書かれたもの。
  • 内田康夫『朝日殺人事件』(朝日町)…浅見光彦が「宮崎たら汁センター」でたら汁とイカ刺とご飯を食べ、百河豚(いっぷく)美術館で待ち合わせる。
  • 松谷みよ子『センナじいとくま』(朝日町)…
  • 池内紀『なぜかいい町 一泊旅行』(朝日町)…「おもかげゾーン―朝日町(富山県)」という章がある。朝日町には自然博物館があるというので行ってみる。ところがそれらしき建物がない。やがて気がつく。この町では、タブノキやヤブツバキの林を自然のままの姿に残し、そこを自然博物館としている。いい考えだと納得する。
  • 北原亞以子『日本民話抄 妖恋』(宇奈月町)…北原には珍しい現代もの「雪女」と「道成寺」の2篇からなる小説で前者に富山が出てくる。デンマークで出会った男女が強盗事件を起こし、宇奈月でひっそりと暮らそうとするが…。
  • 井上江花『越中の秘密境・黒部山探検』(黒部峡谷)…新聞記者だった井上が探訪した記録。
  • 吉村昭『高熱隧道』(黒部峡谷)…黒部第三発電所建設のロマンを描いた富山文学の定番。『わたしの取材余話』(河出書房新社)の「高熱隧道をゆく」によれば、『水の葬列』を書くために訪れて、その悲惨を知ったのだという。
  • 吉村昭『水の葬列』(黒部峡谷)…「ダム工事によって消滅する落人の部落を主題とした」仮構に富んだ作品になっている。
  • 志水哲也『黒部物語』(黒部峡谷)…黒部の山と谷を綴る写文集、カラー50点。「彼はヘルメスのように羽根のついたサンダルをはいている」と池内紀が推薦した。
  • 森村誠一『恐怖の骨格』(黒部峡谷)…日本六大財閥の1つに数えられる紀尾井グループのドン椎名禎介、戦後の財閥解体からグループを甦らせた男の最期が近づいており、たった2人だけの肉親である娘、姉の城久子と妹の真知子が富山県から呼び寄せられた。ところが、高岡市にある紀尾井商事の私設飛行場からエアロスバル機に乗って到着するはずの娘2人がいつまでたっても来ない。立山の東面、黒部新山との間にある通称「幻の谷」に墜落していたのだった。3月で気流が荒い「幻の谷」にはヘリコプターでも近づくことができないし、雪崩の危険も、有毒ガスの吹き出ている温泉もある。城久子の婚約者・佐多は、学生時代の友人で幻の谷の数少ない積雪期入山者である高階と医者の内川を伴って救助に駆けつけた。一方、何かにつけて佐多と張り合っている真知子の婚約者・島岡も仲間とともに現場へと向かった。いち早く現場に着いた佐多らは、操縦士と真知子の遺体を発見。姉の城久子と付き添いの北越は、幸い軽症だった。が、その頃から天候が急変し、北アルプス一帯は低気圧による猛吹雪に包まれることになってしまった…。
  • 池内紀『川を旅する』(黒部川)…ちくまプリマーブックスの一冊で旅好きのドイツ文学者が日本各地の川を廻る。富山では「高天原の水(黒部川)」という一章がある。
  • 江戸川乱歩『押絵と旅する男』(魚津市)…幻想的な作品で残酷でもある。浅草の凌雲閣に通い詰める兄を追っていくと…。『日本探偵小説全集1 江戸川乱歩集』(創元推理文庫)『江戸川乱歩文庫 屋根裏の散歩者 他六編』(春陽堂)渋澤龍彦編『暗黒のメルヘン』(河出文庫…「乱歩は短編の名手なり」と断言する澁澤はこの作品こそ彼の逸品と推す)などに掲載。楠誠一郎に『探偵作家 江戸川乱歩の事件簿』というのがあって、昭和3年、帝室博物館でメキシコから寄贈されたミイラが展示されることになったが、公開されてみると全裸の若い女性の死体と入れ替わっていたという事件だが、「ミイラと旅する男」になっている。乱歩は1927年6月頃の日本海側放浪で魚津に蜃気楼を見に来ている(『探偵小説四十年』『わが夢と真実』の「放浪記」に記述)。「蜃気楼とは、乳色のフィルムの表面に墨汁をたらして、それが自然にジワジワとにじんで行くのを、途方もなく巨大な映画にして、大空にうつし出したようなものであった」という。
  • 有栖川有栖『有栖川有栖の鉄道ミステリー旅』(山と渓谷社)「蜃気楼から闇の中へ」というエッセイがある。氷見線も行く予定だったのに、湖西線の遅れで行けなかったというが残念。城端線は行っている。北陸本線については「押絵と旅する男ツアー」というツアーを想像している。魚津では蜃気楼を見たかったそうだが、そう簡単には見られない。
  • 田部重治『山と渓谷』(魚津市)…田部は富山市出身。岩波文庫に入っている数少ない富山県関係の本の一つ。
  • 吉本隆明「戦争の夏の日」「思想的不毛の子」(魚津市)…戦後のこの思想家は日本カーバイドで敗戦を迎えた。ショックで泣いていたのを寮のおばさんに喧嘩だと思われた。
  • 木本正次『黒部の太陽』(立山町)…映画化された。新聞記者が書いただけに、読んでいてあまり面白いとは思えない。
  • 金久保茂樹『福岡・富山 裏切りの殺人ルート』(立山町など)…有楽出版社から出ていてあまり知られていないかも。「富山きときとツアー」の参加者の一人が殺された。同じ日、福岡では福岡ドームなどに脅迫電話がかかった。二つを結ぶ点と線があるのか?
  • 酒井順子『女子と鉄道』(立山町など)…立山砂防工事専用軌道に乗った話が出てくる。
  • 大伴家持「立山の賦」『万葉集』(新川など)…「立山に 降り置ける雪を 常夏に 見れども飽かず 神からならし」。
  • 作者不詳『平家物語』…入善でなくて“入善小太郎”が描かれる「越中国の住人入善の小太郎 行重、よい敵と目をかけ、鞭鐙をあはせて馳せ来り」。
  • 作者不詳 「源平盛衰記」(黒部)…「四十八ヶ瀬」の文献初出で「木曽早馬ニ驚テ 今井四郎ニ仰テ 六千騎ヲ相具シテ 越中国ヘ指遣ス 兼平ハ鬼臥蒲原打過テ 四十八箇瀬ヲ渡シテ 越中国婦負郡御服山ニ陣ヲトルナリ」。
  • 作者不詳『義経記』(倶利伽羅から如意の渡や岩瀬の渡など)…「」。
  • 法印尭恵『善光寺紀行』(黒部)…善光寺詣りの紀行文で「四十八が瀬も名のみして侍り」。
  • 法印尭恵『北国紀行』(黒部)…三浦半島の芦名に旅した時の紀行文で、黒部四十八ケ瀬は「ひとつ海」 。
  • 半村良 『戦国自衛隊』(黒部)…1975年のSF小説で角川映画ともなった。「つまり最前線を黒部川の東岸に展開し、 自衛隊の協力で兵站線を確保したのである…」。
  • 深田久弥『日本百名山』…剣岳・立山・薬師岳が選ばれている。
  • 新田次郎『劒岳<点の記>』(立山町・大山町)…日本で唯一未登頂だった劒岳に三角点を作るために1907年(明治40年)陸軍陸地測量部の柴崎芳太郎測量手の率いる測量隊が苦闘の末、登頂に成功する。既に平安の頃に登頂の後があり、そこで発見された錫杖と鉄剣は現在、立山町芦峅寺の立山博物館に展示されている。
  • 幸田文『崩れ』青木奈緒『動くとき、動くもの』(立山町)…崩落現場を見て歩く紀行文。25年後に孫が祖母の後を追った紀行文。
  • 鷹沢のり子『芦峅寺(あしくらじ)ものがたり---近代登山を支えた立山ガイドたち---』山と渓谷社(立山町・大山町)…立山ガイドの村、芦峅寺の話で、立山信仰と立山ガイドの関係についても触れている。
  • 十返舎一九『越中立山参詣紀行 方言修行金草鞋』(文化11年)…立山地獄をちゃかしている。
  • 中河与一『天の夕顔』(大山町)…1938年(昭和13)『日本評論』新年臨時号に発表される。63年(昭和38)12月の雪華社版が定本。龍口(たつぐち)という男の独白体により、年上の人妻との悲恋を描く。大学生の龍口はすでに人妻であった下宿先の娘あき子と知り合い、以来二十余年もの間、姉弟のような至純の距離を保ちつつ苦しい交際を続ける。最後に誓い合った5年後の再会すら、あき子の死によって果たされない。永井荷風が激賞し、ベストセラーとなった作品で、海外にも紹介されカミュからも賞賛された。有峰や薬師岳などが舞台になっていて岐阜県神岡町大字森茂には記念館がある。23年も恋いこがれた今は亡き人妻のために、好きだったという夕顔の花に重ねて、野原で花火師に打ち上げてもらう。「天にいるあの人が摘み取ったのだ」と自ら慰める。この大時代的なロマンにはとてもついていけない。
  • 山室静「蜃気楼の町」(魚津市)…山室が小学生の時に魚津の町で暮らした自伝的な小説。
  • 池田弥三郎『魚津だより』(魚津市)…洗足短大教授となって富山で住むことになった慶大教授の話。
  • 室井滋『きときとの魚』(魚津市)…池田の本よりもずっと富山を愛していることが分かる。他にもデビュー作『むかつくぜ!』をはじめ富山ネタの本が多い。
  • 柴門ふみ『にっぽん入門』(魚津市)…「お座敷列車は人情列車」に金太郎温泉と五箇山が出てくる。小淵沢発、妙高高原駅からはバスに乗って金太郎温泉に行き、宴会をして翌日は五箇山からバスで小淵沢着というツアーに参加。
  • 清水邦夫「魚津埋没林」(魚津市)…『風鳥』(文藝春秋)に収録。映画助監督の平吉は伯父の後妻の新子に会った3回とも強い印象を受ける。アフリカに映画を撮りに行くのだが、これは『ブワナ・トシの歌』(羽仁進監督/羽仁進・清水邦夫脚本/渥美清主演)の映画で、撮影中のエピソードなども盛り込まれている。
  • 小寺菊子(富山市)…「河原の対面」「哀しき祖母」「父の罪」「念仏の家」「朱蝋燭の灯影」などがある。
  • 野坂昭如『好色の魂』(富山市)…昭和初期、エロ・グロ・ナンセンス華やかなりし時、たび重なる発禁にも屈せず、女泣かせの極意書や春本をあっぱれ秘密刊行して、名声天下にかくれもない「好色出版の帝王」貝原北辰(富山出身の梅原北明がモデル)。その奔放無頼の生涯を、空前の言論の自由を謳歌する今日、相も変らぬ官憲の発禁処分に対して闘った。現代の北辰、野坂昭如が、己れの自画像をも映し入れながら共感と敬意をこめて描き上げた異色長編。
  • 井伏鱒二『漂民宇三郎』(富山市)…岩瀬を出航した長者丸の乗組員・鍛治屋太三郎をモデルにした小説。
  • 井上靖「七夕の町」(富山市・高岡市)…敗戦後の富山駅前が舞台で、駅前の「オリオン」という喫茶店の右頬に青い痣をもった娘と一晩だけの交渉を持つ。不幸にも会えなくなるのだが、高岡に住んでいると知って七夕の夜の高岡を彷徨う。
  • 久世光彦(てるひこ)…東京生まれ。父は軍人でホトトギス派の俳人で俳号を「【空+鳥】王」といった。1945年6月父の五島列島への転任により、一家は父の郷里の富山に転居。48年に父が病死。東大文学部美学史学を卒業後、TBSに入社。『時間ですよ』『寺内貫太郎一家』などを手掛ける。『薔薇に溺れて』の「仏壇」「死にかけた話」、『家の匂い 町の音』「還暦をひとりあれこれ思案して」「生まれてはじめて住んだ家」「詩人のいた店」などに富山が出てくる。
  • 川村久志『土曜の夜の狼たち』(富山市)…富山市の暴走族事件を一人称で描く。
  • 岩倉政治『一度目の橋』(富山市)…岩倉は井波出身で自伝に『無告(むこく)の記』がある。「空気がなくなる日」などで有名。
  • 佐藤愛子『花はくれない』(富山市)…父の紅緑は1956年に富山日報の主筆次席として1年3カ月富山にいたが、その時の様子を描いたもの。紅緑は大隈重信が「胆力あり、文筆に優れ、演説もうまい」と推した。次席主筆で入社し、半年で主筆となり、論説を担当する。富山での暮らしは、妻が病弱だったことや生後間もない子供を失ったこともあり、わずか1年3カ月にとどまった。
  • 宮本輝『螢川』(富山市)…宮本は富山市に住んでいたこともある。映画化された。『天の夜曲 流転の海・第四部』も同じ作者による富山での生活が描かれている。昭和31年、松坂熊吾は、心機一転、 新たなる事業を起こすべく新天地として雪の富山へと 家族を伴いやってくるが、それも徒労に終わってしまう。 ふたたび大阪へと戻り、新事業の足がかりをつくるが、 よきせぬ災難が、彼を取り囲む。
  • つかこうへい『熱海殺人事件』…富山県警の熊田留吉が出てくる。つかこうへいが在日であることは周知だが、この関係を鴻上尚司『名セリフ!』(文藝春秋)がとりあげていて、見事な分析をしている。
  • 飯島耕一「冬の幻」(富山市)…Tさん(瀧口修造)の生涯を追った小説。
  • 野際陽子『脱いでみよか』(富山市)…3歳まで住んでいた富山の話が少し出てくるタレント本。おじいさんは売薬さんだった。
  • みうらじゅん『郷土LOVE』(スコラマガジン)(富山市)…駅前にある薬売りの銅像に魅了されたという。これまで見た中で、もっとも重そうな荷物を背負った銅像だったという。「きっと売れなかったんだろう」「背中をポンとたたき」「明日、バカ売れだよ」といいたくなるほどせつなくなったという。この他にもホタルイカやメルヘン街道、雷鳥の木彫りの話が出てくる。
  • 藤瀬凡夫(ぼんぷ)『カッパ先生』(富山市)…県立高校の先生が書いた学園もので受験雑誌『蛍雪時代』(旺文社)に発表された。
  • 真木武志『ヴィーナスの命題』(富山市)…富山中部高校らしいところで高校生が死ぬ。自殺か他殺か、のろいか?真木は金沢大学出身の作家。
  • 宮脇俊三『時刻表2万キロ』(富山市など)…1975年に全線「完乗」の旅を始めたこの本は急行「越前」に乗って富山に向かうシーンから始まる。初日は神岡線から富山港線、氷見線、越美北線(福井県)の4線合わせて約百キロの区間である。慣れぬ場所とあって乗り間違いもあり、計画通りにならない旅立ちとなった。特に富山港線で1.1キロを乗れなかったことが大きな悔いになっていく。後に関川夏央が『記者旅放浪記』(新潮社)で宮脇の後をたどっている。
  • 内田康夫『透明な遺書』(富山市)…城址公園が出てくる。
  • 板東眞砂子『曼荼羅道』(富山市水橋)…戦中マレー半島に渡った富山の薬売り「蓮太郎」。現地で情交を重ねた娘「サヤ」が、日本に引き上げていた蓮太郎を訪ねてくるが… 戦中、戦後を舞台にした連太郎とサヤの関係。リストラで故郷に帰った蓮太郎の孫である「麻史」と妻の関係。時間と空間が交互に替わりながら物語が展開する。 富山の売薬と立山信仰が見事に融合した作品。
  • 新田次郎『神通川』(婦中町)…イタイイタイ病の萩野医師を描いた作品。本田英郎にも「神通川」という本がある。
  • 池内紀『川の旅』…「あばれ常願寺」と「ばんどり党」という項目があり、常願寺川と白岩川が出てくる。うれしいことに如意の渡しの写真が載っている。それにしてもドイツ文学者の池内がどうして川に惹かれたのか?
  • 長谷川伸『一本刀土俵入り』(八尾町)…水戸街道、利根川沿いの宿場町を舞台にしたストーリーだが、「越中おわら節」の哀切あふれるメロディが重要な役割を果たして登場する。ヒロインの遊女お蔦が故郷の八尾を思いだして歌う。1931年に歌舞伎として初演されて以降、新劇、新国劇をはじめ、浪曲など様々なジャンルにわたって上演され続けてきた名作で、映画でも初演の年から1960年にかけて6回もリメイクされ、片岡千恵蔵、高峰三枝子、長谷川一夫、越地吹雪らがスクリーンを飾っている。
  • 吉井勇『寒行』『流離抄』(八尾町)…歌人・吉井勇が送った疎開生活を描く。八尾の西町のM旅館に疎開していた時に詠んだ歌が多い。地元の画家・林秋時と深い交友があった。
  • 高橋治『風の盆恋歌』(八尾町)…ドラマ化されたために八尾が大迷惑をしている作品。
  • 五木寛之「風の柩」【『鳩を撃つ』所収】(八尾町)…五木には風が似合う。
  • 森村誠一『人間の証明』(八尾町)…八尾がおおきな意味を持つ。
  • 和久峻三『風の盆殺人事件』(八尾町)…赤かぶ検事シリーズ。レイプ犯が風の盆で沸く八尾に紛れ込む。
  • 西村京太郎『風の殺意・おわら風の盆』(八尾町)…十津川警部シリーズ。カメラマンの前から恋人が失そう。恋人の写真から八尾に来るのだが、事件に巻き込まれ、十津川警部が登場。
  • 内田康夫『風の盆・幻想』(八尾町)…風の盆祭りの直後に老舗旅館の若旦那が、公園の植え込みで死体となって発見された。とある人物の依頼を引き受けた「軽井沢のセンセ」こと作家の内田康夫は、浅見光彦と共に風の盆の地へ謎解きへと向かう。そして、飛騨高山、神岡と越中八尾を結ぶ、秘められた愛にたどり着く…。事件の調査に二人で町の中学校を訪ねると、教頭が大の内田ファンで「えっ、あの内田先生ですか。となると、こちらは名探偵の浅見さんご本人ですか」「小説の中では架空のこととして読んどりますが、本物に会えるなんて夢のような話やなあ」といわれる。
  • 柴田理恵『よい子はマネをしないでネ』(八尾町)…八尾高校時代が出てくるタレント本。
  • 『愛の流刑地』=『愛ルケ』として大ヒットした作品。渡辺淳一原作。村尾菊治はかつて恋愛小説の旗手として脚光を浴びたが、今は新作が書けずにくすぶっていた。そんな菊治がある日、女友達の紹介で、自分の作品のファンだという関西在住の人妻、入江冬香と京都で出会う。北陸・富山の生まれで、すき透るような白い肌が美しい。その細い手に、以前見たなまめかしいおはら風の盆の踊りを思い出し、菊治は強く心惹かれる…。2007年に鶴橋康夫監督、豊川悦司、寺島しのぶ、長谷川京子ほかで映画化。
  • 山本茂実『あゝ野麦峠』(八尾町)
  • 池内紀『ひとり旅は楽し』(中公新書)=「不便さが宝」というところで、八尾が出てくる。何と駅前に“Live is Love in Yatsuo”という意味の分からない看板があったという。
  • 乃南アサ『ドラマチック・チルドレン』(大沢野町)…推理作家の書いたノンフィクション。登校拒否の子どもたちを集めて生活する夫婦の話。
  • 横光利一『紋章』(氷見市)…魚醤(タイのナンプラー、ベトナムのニョクマムなど)つくりに捧げて周囲から変人あつかいされるほど一途に研究に打ちこんでいる男と、思考力過剰でなにも行動が起こせなくなっている男を軸にして、官界、学会、実業界の人間模様を描いた小説。
  • 辺見庸『赤い橋の下のぬるい水』(氷見市)…今村昌平監督映画の原作。水と川水が危うげに交じりあう河口の橋のたもとに、その女はいた。驚くべき体の秘密をもてあましつつ、悲しげに…。性の奥深さ、不埓さを型破りに描き出した迷作。
  • 中保喜代春『ヒットマン』(氷見市・高岡市)…1998年7月卓見勝組長を射殺した犯人は氷見出身だった。潜伏していた高岡で運命の人に出会い、子どもが生まれて一週間後に逮捕されてしまった。
  • 津本陽『修羅の剣』(氷見市)…幕末の天才剣士・仏生子弥助虎正を描いた。氷見市仏生寺の生まれで、ある時突然自分の剣の腕前を知り、国を抜だし 江戸の道場でさらに腕をあげる。
  • 武田泰淳『貴族の階段』(氷見市)…氷見子という女性が出てくる。映画化もされた。
  • 峰隆一郎『幕末人斬り伝 剣鬼・仏生寺弥助』(氷見市)…同じく弥助を描いたもの。
  • 三遊亭圓朝「敵討札所の靈驗」(高岡市)…「行く處もなく、越中の國射水郡高岡と云ふ處に、萬助といふ以前の奉公人が達者で居ると云ふから、これを頼つて行き、大工町といふ片側町で、片側はお寺ばかりある處へ荒物店を出し、詰らぬ物を賣つて商ひ致す…」 (鈴木行三編『圓朝全集』 第2巻 春陽堂「敵討札所の靈驗」1927)。
  • 吉屋信子『はぎ女事件』(高岡市)…明治の俳壇で有名だったが、架空説さえ出ていたはぎ女が実在していることをつきとめた作品。
  • 室生犀星『美しき氷河』(高岡市伏木)…義姉のいる伏木の料理屋に逗留する若者が「豊富な肉感」があるお吉と、「精神的な美しさ」をもったお鶴の二人の半玉の間で揺れ動く。
  • 井上靖『夜の声』(高岡市・新湊市・氷見市)…交通事故で頭に障害を負った万葉研究家・千沼鏡史郎は夜に「闘え、正せ、直せ!」という神の声を聞いて万葉時代の正義を取り戻すために筑波山麓から信州を越え、直江津を通り、高岡に入る。いずこも自然破壊が進んでいて、絶望する。
  • 松本清張『ゼロの焦点』(高岡市)…失踪した鵜原が「高岡に用事があるので」という記述だけで、高岡の描写はない。
  • 松本清張『けものみち』(高岡市伏木)…ヒロインの成沢民子が伏木の出身の設定。生まれはどこかと尋ねられていう。
    「富山県でございます。」「…富山県はどちらですか。」「伏木でございます。」「…高岡から海岸に入ったところですね。」「はい、古い港ですわ。」      
  • 堀田善衛「夜来香」(高岡市伏木)…堀田の生まれた町なのでいくつかの作品がある。「夜来香」は「伏木ーといっても知らない人の方が多いだろうが、北陸のある湾の奥にあるこの小さな河港の町はずれに、ナギサホテルというしゃれた名前のホテルがある。しゃれているのはしかし、名前ばかりで…」と始まる。戦時中、伏木港の管理官だった主人公の披露伊作が小説を書くために戻ってきた…。
  • グレゴリ青山『旅で会いましょう。』(メディアファクトリー)…男みたいな名前だが女性。伏木港からロシア・ウラジオストクへの2泊3日の船旅。台湾では温泉に入り、抜群においしい水ギョーザを楽しむ。温泉の好きな人らしく、韓国の馬金山ではオンドル式サウナで汗をかき、釜山のアジア最大という健康ランドでは多彩な風呂をたっぷり味わう。船で出会ったアンジェはハーレーで世界一周している男だ。「私の家は世界、家族は世界の人々」っていうセリフもいい。
  • 立川志の輔『笑われる理由』(新湊市)…タレント本で自伝的要素の強い作品で富山県の県民性の考察も出てくる。『志の輔のものさし』など富山ネタが多い。
  • 木々康子『林忠正とその時代』(高岡市)…高岡出身でジャポニスムの画廊になった林を孫の木々が描いたもの。
  • 木々康子『蒼龍(そうりゅう)の系譜』(高岡市)…「養父利長を思慕して止(や)まなかった三代藩主利常の遺志を継いで、代々の藩主は利長公の年忌を殊(こと)のほか盛大に行うのを習わしとしていた。御墓と菩提寺のある高岡は、この時だけ利長の時代の盛時を取り戻すのである」。
  • 木崎さと子『楼門』(高岡市瑞龍寺)…木崎は富山で暮らした。『青桐』にもT駅が出てくるし、『裸足』の「夏草」には鷹見(高岡)などが出てくる。『沈める寺』には氷見市の真宗のお寺が出てくる。環日本海絵本『うみをわたったこぶた』もある。
  • 高田宏『北国のこころ』(NHK出版)の十二章「都を離れて/大伴家持の越中五年」。高田は1932年に京都に生まれ、4歳から18歳まで江沼郡大聖寺町(現加賀市大聖寺)で過ごし、雪国、北国にこだわった文筆活動を行っている。
  • 水上勉『破鞋 雪門玄松の生涯』(高岡市国泰寺)は臨済宗国泰寺派の総本山・国泰寺の管長を務めた雪門禅師の生涯を描いたもの。
  • 海音寺潮五郎『天と地と』(砺波市)…
  • 永井するみ『枯れ蔵』(砺波市)…「日本推理サスペンス大賞」からリニューアルした「新潮ミステリ倶楽部賞」の第1回大賞受賞作で珍しい農業サスペンス。富山県の水田に害虫トビイロウンカが大量発生した。このトビイロウンカは主要な農薬に対して耐性をもち、このままでは不作、米不足が懸念された。しかし何故富山県一カ所だけに耐性を持つウンカが発生したのか?食品メーカーで富山県産有機米を使用した製品を開発した陶部映美は、米流通会社ファーブルライス社長、原田とともに富山を訪れる。そして、陶部の友人のツアコンが自殺をしていた…。
  • 池内紀「明神の申し子」(『祭りの季節』みすず)…子供歌舞伎を取り上げている。
  • 三島由紀夫『山の魂』(庄川町)…庄川流木事件(訴訟)を扱っている。
  • 高見順『流木』(庄川町)…庄川流木事件(訴訟)を扱ったルポのような作品。
  • 山田智彦『湖の墓』(庄川町)…庄川流木事件(訴訟)を扱っている。
  • 山田和『瀑流』(庄川町)…庄川流木事件(訴訟)をモチーフにした大恋愛を描いていて純愛ぶりは『天の夕顔』のよう。山田は砺波市出身のカメラマン。
  • 水上勉『桜守』(庄川町)…庄川上流の御母衣ダムのほとりに樹齢四百年を超すエドヒガンザクラがある。ダム建設で水没する運命だったが、昭和35年に桜博士として知られた笹部新太郎の協力を得て移植された。笹部はこの小説のモデル。
  • 内田康夫『郷倉敷殺人事件』…草西英(ひかり)と二人の刑事が望岳寮を訪ねた後、庄川温泉に宿泊してアユ料理を食べる。
  • 池波正太郎「越中・井波−わが先祖の地」(『旅でみつけたうまいもの』コロナ・ブックス・31 平凡社)(井波町)…父方の先祖は南砺市(井波)出身の宮大工で天保年間に江戸へ移り住んだ。これは初めて井波を訪れた時の文章。
  • 池田源尚「死すまじ」「運不運」(井口村)…昭和14年に小説「運・不運」で改造社の文芸賞を受賞してデビュー。富山の地主の子だったが、当時の若い学生は多かれ少なかれマルクス主義者であり、共産主義者だったと回顧している。戦後は農民運動に情熱を燃やしたが、日本共産党の路線に異議を唱え脱党している。
  • 小杉健治『もう一度会いたい』(城端町)…アルツハイマーの進行を自覚する老人と、引きこもりの青年が出会い、青年は老人が自分の記憶を失う前にもう一度会って謝りたいと願う女性を探し出す。その過程で青年が社会復帰していく。
  • 吉川英治『新平家物語』(小矢部市倶利伽羅など)…(四)「くりからの巻」に出てくる。
  • 熊谷達也『ゆうとりあ』(福光町)…南砺市の山村を舞台に初の新聞小説(2007年1月から北日本新聞に掲載)で「ユートピア」と「ゆとり」をかけた「ゆうとりあ」の所在地を、石川県境の富山県のN市とした。商社を定年退職した団塊の世代のサラリーマンが妻とともに首都圏から山村に引っ越す。そこはUターンやIターンを望む人々を受け入れる「ゆうとりあ」。初めは理想郷に見えた土地だが、沈黙を守っていた森が目を覚まし、人々を予想もしなかった苦境へと追い詰めていく。
  • 棟方志功『板極道』(福光町)…疎開先の福光の人々との出会いが出てくる。
  • 長部日出雄『鬼が来た!〜棟方志功伝〜』(福光町)…故郷青森には「錦を飾るまで帰れない」とする志功は、福光町光徳寺の住職・高坂昭貫と知り合い、富山を疎開先として考えるようになる。疎開に先立って、志功は、福光を何度も訪れ、周到な準備をして、居場所を作っていた…。
  • 遠藤和子『オロロのいる村』(福光町)…あすなら書房刊。遠藤は富山市出身。『佐々成政』(北日本新聞など)、『松村謙三』(KNB興産」、『富山の薬売り』(サイマル出版会)、『薬売り成功の知恵』(サイマル出版会)など。
  • 室生犀星「大槻伝蔵」(平村)
  • 司馬遼太郎『街道をゆく 四 郡上・白川街道と越中街道』(五箇山、呉羽山など)…「五箇山の村上家」「山ぶどう」「立山の御師」を書いている。
  • 松本清張…佐々成政「ひとりの武将」という短編があり、『疑惑』(新湊市)があり、『砂の器』でも裏日本が出てくる。
  • 井上雪『その手を見せて』(冬樹社)…北陸の特産を描いた本で「福岡の菅笠」「黒部のすいか」「五箇山のとうふ」「大門のそうめん」「井波の木彫」「富山の薬売り」「氷見の細工かまぼこ」「氷見の干イワシ」という章がある。
  • 柳田国男『北国紀行』…『定本柳田国男全集3』所収「木曾より五箇山へ」。明治四十年五、六月に木曾・飛騨・北陸を旅した。五月二十八日に木曾上松を出発。王滝・上島・野口・氷ケ瀬・柳ヶ瀬・滝越・三浦・御厩野・下呂温泉・小坂・飛騨高山・三日町・夏厩・六厩・三尾河・一色・猿丸・御母衣・荘川村・白川村・荻町・鳩谷と、深い山々を川伝いに八日間かけて巡った。そして六月五日、飯島を立った柳田は、その日のうちに椿原・小白川・赤尾を踏破し越中城端に到着。日記には「今日の旅、草鞋(そうあい)十一里」とある。夕刻に鉄道で金沢に入った。六月六日は金沢で丸一日休養したが、七日には長旅がこたえ体調を崩し「能登の和倉へ寝に」いった。しかし、九日には再び旅行を開始。津幡を経て富山へ。「立山は見えざれど、四山は凡(すべ)て雪を戴(いただ)けり」という壮大な光景に感銘した。十一日魚津泊。十二日には愛本橋を渡り黒部の秘湯黒薙温泉に泊まっている。十三日にはさらに川上の出平の山小屋まで行き、再び愛本橋に戻り舟見を経て泊に辿り着いた。柳田が旅の最後に見たものは宮崎海岸の果ての日本海だった。
  • 黛まどか『文豪、偉人の「愛」をたどる旅』(集英社新書)(平村)…お小夜の愛と死を描いたエッセイ。「緑さす切(せつ)に合わせて掌(たなごころ)」という俳句を残している。
  • 能坂利雄『北陸史23の謎』他たくさんの著作がある。「佐々成政はなぜ立山越えをしたか」などが有名。
  • 辺見じゅん『花子のくにの歳時記』…辺見は角川源義の娘、角川春樹の姉。富山にまつわる話を女性らしい視点で書いた随筆。
  • 清水真弓『花冷え』(富山市)…辺見じゅんが本名で書いた小説。前半は亜紀が疎開したT県の片田舎の父の実家が舞台。その北村家の旧家で彼女は、父の兄、安一の嫁に対して鬼のようにいびり抜く祖母・しなの姿を見る。後半は戦後の東京で、父母のもとに帰ってからの話である。亜紀を待っていたのは恋い慕う「幻の慈母」ではなく、浮気をしているらしい夫への苛立ちを亜紀たちにぶつける一人の女だった。さらに亜紀は、家庭教師の学生と母の不倫の現場を目撃してしまう…という教養小説になっている。
  • 木崎さと子『うみをわたったこぶた』(岩崎書店)…大島絵本館と一緒に作った絵本で絵は黒井健。
  • 八木光昭編『ふるさと文学館全55巻』(ぎょうせい)…第20巻が富山編。洗足学園魚津短大教授だった八木は「富山文庫」を創設。
  • 『風土への回帰・日本海辺の文学』(能登印刷出版部)…各作家の丁寧なまとめが入っている。
  • 『北陸・名作の舞台』(北国新聞社)
  • 『富山県文学事典』(桂書房)
  • 朝日新聞『ほくりく文学散歩』(能登印刷出版部)
  •  なお、『ふるさと文学館 第20巻』(ぎょうせい)には以下の作品が載っている。

    貧しき小学生徒 横山 源之助/著
    埋れ井戸 三島 霜川/著
    北国紀行(抄) 柳田 国男/著
    無告の記(抄) 岩倉 政治/著
    古い兜 大井 冷光/著
    花売少年 大井 冷光/著
    魚津の米騒動発祥の地 大町の浜辺 高島 順吾/著
    押絵と旅する男 江戸川 乱歩/著
    やがて悲しき蜃気楼 池田 弥三郎/著
    浸蝕 柏原 兵三/著
    雲の子供 大井 冷光/著
    鰤網 藤森 秀夫/著
    潮騒 舟川 栄次郎/著
    北海 高島 高/著
    海辺にて 高島 高/著
    雪国 田中 冬二/著
    故園の鍋 田中 冬二/著
    わが水郷の冬 青塚 与市/著
    湯女の魂 泉 鏡花/著
    薬師岳と有峯 田部 重治/著
    毛勝山より剣岳まで 田部 重治/著
    ふるさとの山々 田部 重治/著
    越中の山河 田部 重治/著
    佐々成政はなぜ立山越えをしたか 能坂 利雄/著
    浴泉 田中 冬二/著
    くずの花 田中 冬二/著
    山峡早春 田中 冬二/著
    北方の詩 高島 高/著
    続・北方の詩 高島 高/著
    呉羽山 藤森 秀夫/著
    小さな旅券 坂田 嘉英/著
    野がかすむころ(抄) 上村 萍/著
    河原の対面 小寺 菊子/著
    蛍川 宮本 輝/著
    神通川 新田 次郎/著
    桜石斑魚 斎藤 素影/著
    越中の水・富山の水 池田 弥三郎/著
    神通磧 藤森 秀夫/著
    雪かみなり 早川 嘉一/著
    常願寺川 高島 高/著
    石 山本 哲也/著
    七夕の町 井上 靖/著
    夏草 木崎 さと子/著
    風の柩 五木 寛之/著
    風の盆 池田 瑛子/著
    八尾幻想 森 幸一/著
    村の病院 三島 霜川/著
    父の帰宅 小寺 菊子/著
    津奈の草履 畷 文平/著
    坐棺 柏原 兵三/著
    うまれた家 大井 冷光/著
    念仏の家 小寺 菊子/著
    幼年時代 田部 重治/著
    雉子の声 角川 源義/著
    露地の落葉 尾島 庄太郎/著
    ふるさとの樹の下で 尾島 庄太郎/著
    花子のくにの歳時記(抄) 辺見 じゅん/著
    越中売薬は誰がはじめたか 能坂 利雄/著

    葬式 田中 冬二/著
    山の雪売 田中 冬二/著
    ふるさとにて 田中 冬二/著
    故郷詩抄 田中 冬二/著
    ふるさとの家の壁 田中 冬二/著

    冬の着物 田中 冬二/著
    鉄道唱歌 三浦 孝之助/著
    初雪の日に 中山 輝/著
    石ころ 中山 輝/著
    遠蛙 中山 輝/著
    くらら咲くころ 多胡 羊歯/著
    白い鷺 多胡 羊歯/著
    夕方 多胡 羊歯/著
    この道 多胡 羊歯/著
    雨あがり 多胡 羊歯/著
    ある町 舟川 栄次郎/著
    旋風 舟川 栄次郎/著
    おはぐろがめ 舟川 栄次郎/著
    村だより 早川 嘉一/著
    土俗の町 高島 順吾/著
    御神燈のある町 高島 順吾/著
    岩の女神 稗田 菫平/著
    雪眠る 萩野 卓司/著
    早春譜 萩野 卓司/著
    三夢三話 滝口 修造/著
    目も乾いて 坂田 嘉英/著
    寒しい町 高田 みつ子/著
    環状線 高田 みつ子/著
    母 尾山 景子/著
    古い百姓家が潰れる 泉野 作雄/著
    子供たちへ 春川 正人/著
    越の国常住詩篇 室谷 紀彰/著


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