金川 欣二:マックde記号論(言語学のお散歩)


スワヒリ語「超」入門


☆スワヒリ語「超」入門

 ここでは1時間でスワヒリ語を学ぼう。サリンジャーの『キャッチャー・イン・ザ・ライ』(村上春樹訳、白水社)の最初の方に図書館でアイザック・ディネーセン『アフリカの日々』という本を間違って借りてくる話が出てくる。主人公のホールデンはすっかり気に入ってしまう本なのだが、この本の最初に次のような文章が出てくる(横山貞子訳、晶文社)。

 アフリカの高原ですごしたことのある人なら、あとで思いかえしてみると、しばらくの時を空の高みで生きていたような気がして、おどろきに打たれるにちがいない。

 Looking back on a sojourn in the African highlands, you are struck by your feeling of having lived for a time up in the air.

 そして、僕が一番好きなのはヒロインが恋人と飛行機で空へ飛んでいるのを見たキクユ族の長老が「神様に会えましたか」と聞く場面だ。言葉を詰まらす二人に「では、何で空に昇っていっているのですか?」とけげんそうに尋ねるのであった。『愛と哀しみの果て』という映画もあるので是非どうぞ。

 そして、いつの日か、アフリカを旅してもらいたい。空の高みには違った時間が流れていることに気づくだろうから。


 さて、スワヒリ語だが、簡単に雰囲気だけ分かってもらいたい。

 発音は基本的にそのままローマ字読みだ。thはthick、dhはtheの子音。便宜的に切れるところで、ハイフン-を入れた。

 音節は日本語に近い。ただ、N音で始まることがあるのが、違う。西江先生があるとき「(N・D・Oという)三種のアルファベットを幅の広いテープの輪に連続して書きつけたもの」をアフリカの人たちに見せると、日本では「ドン、ドン……」か「ド・ン・ド・ン……」という認識の仕方だったのだが、東アフリカの人たちはみな「ンド、ンド……」となったというのである。スワヒリ語では「釘をガンガン打つ」というのは「釘をンガ、ンガ打つ(piga msumari NGA NGA)」という。

 君たちが知っているのは「ジャンボ」jamboと「ハクナ・マタタ」hakuna matataだろう。「ジャンボ」は「こんにちは」でアメリカへ贈られた最初のゾウの名前が「ジャンボ」だった。英語の“jumbo”は「大きいもの」を指すようになり、ディズニーの『ダンボ』のお母さんの名前にもなったが、耳の長い“Dumbo”は“dumb”(間抜けな)という意味でつけられた。「ハクナ・マタタ」は『ライオン・キング』でミーアキャットのティモンとイボイノシシのプンバが歌う歌で“No problem.”に相当する。

 単数・複数があるが、語頭が変化する。m-japaniというと単数の「日本人」でwa-japaniは複数である。

 スワヒリ語では名詞は単複の形で12くらいの分類ができる。いくつか示す。

M―WAクラス…人間に関するもの

KI―VIクラス…物の名前(キリ―マ・ンジャロは「輝く山」)

M―MIクラス…樹木の名前(概して細い物)

JI―MAクラス…果実や、対やセットになっている身体の部分、外来語、拡大を表す語

N―Nクラス…人間(親族関係)や家畜・野生動物、外来語

Uクラス…形容詞と動詞の名詞形、抽象名詞

PA―KU―Mクラス…場所を表す名詞 

 奇妙だと思う人がいるかもしれないが、フランス語では男性、女性名詞に分けられ、ドイツ語などではこれに中性名詞が加わる。しかも、理由がなくて不条理だ。「海」はラテン語で中性だったが、イタリア語では男性になり、フランス語では女性になった。つまり、どの言語も不条理なのである。

【】は英語の相当語。

Jambo. 「おはよう/こんにちは/こんばんは」

Habari gani?  「こんにちは(ニュースはありませんか)」

Habari zako? 「お元気ですか?」 Habari ya asubuhi? 「お早うございます」(朝のニュースは?)

mchana 「昼」 jioni 「夜」

Nzuri sana. 「(とても)よい/元気です」 Na wewe je? 「あなたはどうですか?」

Samahani. 「すみません/失礼します」

ngoja kidogo. 「ちょっと待って」

Pesa Ngapi? 「いくらですか?」

ghali sana 「高い(高すぎる)」

mimi ni m-japani. 「私は日本人です」 mimiが「私」

Jina lako nini? 「名前は何ですか?」

(Ni-)na-kw-enda〜 「〜に行きたい」

Ni-na-taka〜 「〜がほしい」

nini? 「何」【what】 Hii ni nini?「これは何ですか?」

Nani? 「誰」【who】?

Mahali gani? 「どこ」?(場所)

Wapi? どこ?(方角)

Lini? いつ【when】?

Namna gani? どうやって?

Kwa nini? どうして?「なぜ」【by/for what?】

Ipi? どっち?

karibu 「どうぞ」 polepole「ゆっくり」

na 「そして」【and】 embe tamu na kubwa 「甘くて大きいマンゴー」

au 「または(それとも)」【or】

ndiyo 「はい」 hapana 「いいえ」/la「いいえ」

lakini  「しかし」【but】

sasa   「今」【now】 karibu 「どうぞ」

Asante-ni (sana).  「(大変)ありがとう」Asante-ni(相手が複数)

Kwa heri  「さようなら」 Kwa heri-ni(相手が複数)

Kwa heri ya ku-onana 「さようなら、また会いましょう」

Tu-ta-onana tu-ki-jaa-liwa 「神の思し召しがあれば、また会いましょう」

1 moja 2 mbili 3 tatu 4 nne 5 tano 6 sita 7 saba 8 nane 9 tisa 0 sifuri 


☆統語論

○繋ぎの動詞

ni【肯定】 sini【繋ぎの動詞の否定】

Yeye (ni) m-tu m-wema.「彼(女)は親切な人だ」

Nyinyi si wa-nafunzi. 「あなたたちは学生ではない」

○疑問文は文尾のイントネーションをあげるだけでいい。

○「〜の」は-aだが、接頭辞はクラスによって変化。

○形容詞は後に付く

pilipili mingi 「いっぱいのトウガラシ」

wa-tu wa-zuri na wema 「よくzuri、そしてna 親切なwema人たちwa-tu」

○不定詞はku-で始まる。ku-safiri 「旅に出る」 ku-fanya 「する」

○×文の構成は次の通り。

  主語+主辞―時制辞―目的辞―動詞語幹+目的語

 mimi ni-li-enda shule.  「私は学校へ行った」

 ni-が主辞で、時制辞は-na-現在、--li-過去、--ta-未来、-me-完了で、endaが「行く」という動詞語幹になる。

人称代名詞 主辞 否定主辞 目的辞

mimi ni- si- -ni-

wewe u- hu- -ku-

yeye a- ha- -m-

sisi tu- hatu- -tu-

nyinyi m- ham- -ku-

wao wa- hawa- -wa-

(Mimi) ni-ta--taka ku-sema ki-swahili kidogo tu.

「私はスワヒリ語ki-swahiliを少しkidogoだけtu話しsemaたいtaka 」

(Wewe) u-na-ki-taka kitabu hiki?  

「このhiki本kitabuがほしいtakaですか?」

○所有はnaで表されて否定は否定主辞にnaをつける。

Nina kazi. 「私は仕事kaziを持っている」 

Mwalimu wa hesabu hana nafasi. 「数学hesabuの先生mwalimuは暇nafasiがない」

所有形容詞(音が変化する)

-angu「私の」 -etu 「私たちの」

-ako 「あなたの」 -enu 「あなたたちの」

-ake 「彼(女)の」 -ao 「彼らの」

Jina langu ni Kinji Kanagawa.  「私の名前jinaは金川欣二です」

○「〜に」は-niで表す。nda-ni ya kabati「戸棚の中に」 nyumba-ni「家に」

○存在「ある、いる」は主辞+po,ko,moで表される。

po…明確な場所 a-ta-ku-we-po saa sita. 「彼は正午にここにいるだろう」

【スワヒリ時間と日本時間は6時間違ってsaa sitaは「6時」で「正午」】

ko…不明確な場所 Choo kiko wapi?「トイレはどこ?」 Uko wapi?「あなたはどこにいる?」

mo…内部 M-zigo wa-ko u-mo nda-ni ya kabati.

「あなたの荷物zigoは戸棚kabatiの中 nda-niにありますu-mo」

Hayuko hapa, yuko shule.「彼(女)はここにいません。学校にいます」shule=独Schule=school

Walipotoka shuleni walirudi moja kwa moja hadi nyumbani.「彼らは学校を出て、家まで真っ直ぐに戻った」

Ni-na-weza ku-sema ki-suwahili ki-dogo tu. 「私はちょっとだけスワヒリ語を話せます」

Kesho nitakwenda kukata tikiti ya kwenda Nairobi.「明日、ナイロビ行きの切符を買いに行きます」 tikiti=ticket


「マライカ」という歌が有名で、コサ出身だから直接関係のないミリアム・マケバも歌っています。

Malaika
Malaika, nakupenda Malaika.
Malaika, nakupenda Malaika.
Nami nifanyeje, kijana mwenzio,
Nashindwa na mali sina, we,
Ningekuoa Malaika. I would marry you Angel.
Nashindwa na mali sina, we,
Ningekuoa Malaika.


ma-gari ya-li-po-end-esh-w-a na-o「車が彼らによって運転された時」

ma 
gari   
ya   
li   
po   
end   
esh
w
a
na
o
名詞クラス接頭辞、ji-クラスの複数
「車」
主語「車」と一致
過去
関係副詞p-は時間、-oは関係辞
「行く」
使役
受け身
動詞変化形接尾辞の一種
…によって
「彼ら」の省略形


☆更に勉強したい時は

 kazi ya tembea「散歩職」を自認していた西江雅之先生は高校生の時にスワヒリ語の文法書を出したことで有名だ。

アブディ ファラジ・レハニ 『CDエクスプレス スワヒリ語』(白水社)

竹村景子『スワヒリ語のしくみ』(白水社)

宇野みどり『まずはこれだけスワヒリ語』(国際語学社)

五島忠久『スワヒリ語文法入門』(大學書林)

守野庸雄・中島久『スワヒリ語常用6000語』(大學書林)など。

スワヒリ語 【CD付】 (大阪大学世界言語研究センター 世界の言語シリーズ1) (大阪大学世界言語研究センター 世界の言語シリーズ)

お金のある人はこちら。多言語社会を理解するためにはアフリカの今の状況を知るべきである。

    

旅行したい時には次の本が楽しい。僕が旅行した時は自分でマニュアルを作ったものだったが…。

  


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