金川 欣二:マックde記号論(言語学のお散歩)


 

ラー族の逆襲

戦後日本の…族たちII

 

 前に「多民族国家・日本」というのを書いた後で、「ラー族」から自分たちが忘れられていると逆襲をくらった。

 つまり、「…族」の時代は終焉をつげ、今は「ラー」の時代になっているらしいのだ。

 他にも「ティッシャー」(ティッシュ配りをする人)とか、「ジモティ」(地元の人)という作り方があるが、キリがないので、ここでは「ラー」にこだわった。

 どうして「ラー族」が多いかというと外来語に付けられる動詞の多くは「〜る」で終わるから、その行為者は“-er”をつけて「ラー」になってしまうからだ。「グッチ」から「グッチャー」も生まれたが、「チャー」族は勢力をつけなかった(語感が悪かった?)。

 最初の「ラー」は「シャネラー」だったと考えられる。それが、安室奈美恵に使われ、一挙に「ラー」族を結成したものと見られる。というのも「シャネラー」は1993年発行の米川明彦編『すきやねん 若者語辞典 梅花女子大生のことば』(月刊『言語』大修館に1992年4月まで連載)には既に掲載されているが、安室は1995年、小室哲哉プロデュースによる「Body Feels EXIT」が大ヒットし、続く「Chase the Chance」がミリオンセラーを達成したことから知られるようになり、「アムラー」は96年の『現代用語の基礎知識』で初めて載るようになったからだ。

 もちろん、シャネラーに相当する言葉は英語にはない。そして、「シャネラー」や「アムラー」までは英語の“-er”の造語力があったが、「ナオラー」や「マツラー」からは日本語の「ラー」が接尾辞になってしまった。いわゆる異分析というもので、hamburg-erがcheese-burgerとなってburgerが意味のある言葉となり、異国の地でteriyaki-burgerまでできてしまうようなものだ。

 昔は「サユリスト」(古い!吉永小百合ファン)やコマキスト(栗原小牧ファン)といって「…イスト」がいたが、今は主義主張を抜いた、こだわりのない「…ラー」の時代なのだ。不思議なことに「…イスト」は男性のファンで、「…ラー」は女性が圧倒的に多い。男はくだらないことに昔からこだわるのだ。

 ちなみに僕は「ラー族」よりも「裸族」の方が好きだ。

 米川明彦『若者ことば辞典』(東京堂)や岩松研吉郎『日本語の化学』(ぶんか社)に掲載のものが今のところ一番多かった。

 では、日本にどんな「ラー族」がいたのだろう。

 といいながら、ほとんど意味のないエッセー?で自分でも困ってしまう。他で「〜スキー」(チャイコフスキーとかチョムスキーとか)を集めた「スキー教室」も見たことがあるが、あんまり変わらない(“-ski”はロシア系で“-sky”はポーランド系といわれる)。

 他にも気づいたら教えてください。


●アムラー=安室奈美恵を意識したり、そっくりの格好をする女性(『日本語の化学』『若者ことば辞典』にも掲載)で超ミニスカート、底の厚いブーツ、肩まで垂らす長い髪の三点セットが取りあえずの「アムラー」条件だそうで、街には“安室奈美恵もどき”が溢れた。※「ラー族」の祖先で1996年に流行ったが、同年、いっぱい「ラー族」が誕生した。※アララー、カハラー、ナオラー、ハマダー(ダウンタウンの浜田雅功のようなアメカジ【アメリカン・カジュアル】の古着のストリート系ファッションをしている人で『若者ことば辞典』にも掲載)。※1996年の新語・流行語大賞のトップ10に入った。なお、「チョベリバ」などもこの年だった。

●アララー=間投詞の「アラ」と「アムラー」の合成語で、服装やメイクなどがアムラーになりきれない女性(『若者ことば辞典』にも掲載)。木村拓哉に似ても似つかない「キムタコ」、「キモタク」に似た命名。

●ヴィトラー=ルイ・ヴィトンの愛好者(『若者ことば辞典』にも掲載)。※グッチャー、シャネラー、フィンダー(“「フィンディ」愛好者。オトナのフィンダー、お金をかけただけのシャネラー、手軽なヴィトラーと見られる”と『若者ことば辞典』に掲載掲載してあるのだが、「フェンディ」のはずで少しフェンディ)、プラダー(プラダ愛好者)、ミラノちゃん(イタリアブランド全て)なども同じ愛好者。

●ウチラー=何かというと「うちらはさ〜」という女子高生で、コラムニスト中森明夫が命名(『日本語の化学』にも掲載)。

●ウノラー=タレント・神田うのからで声が人一倍甲高くて、自分のことばかり話したがる女性(『日本語の化学』にも掲載)。

●エハラー=香山リカ『スピリチュアルにハマる人、ハマらない人』(幻冬社新書)に出てくるが、「スピリチュアル・カウンセラー」の江原啓之を信じている人々。

●カハラー=コムロ(小室哲哉)の元お気に入りの歌手の華原朋美からで、彼女を真似た女性(『若者ことば辞典』にも掲載)。

●ガブラー=マラソンの有森祐子の夫・ガブが語源で、小銭を借りまくって踏み倒すのが得意な人(『日本語の化学』にも掲載)。

●キティラー=ファンシー・グッズのハロー・キティのファンで周り中、キティちゃんだらけにする人。

●サークラー=「サークル」からで、サークルによく来る人(『若者ことば辞典』にも掲載)。

●サドラー=バーンスタインの弟子で指揮者・佐渡裕のファン。

●ジェアラー=JRで通勤・通学している人(『若者ことば辞典』にも掲載)。

●シキラー=「仕切る」からで何ごとにつけても仕切らないと気が済まない人で「多少の嫌悪と侮辱のニュアンスがある。主に女子が使用」(『若者ことば辞典』参照)。

●シゲラー=長嶋茂雄からで何でもほしがる、一見紳士風のオジサン(『日本語の化学』にも掲載)。

●シノラー=歌手・篠原ともえファン。

●ジミラー=サッカー日本元代表の岡田監督から。超地味だったのにいきなり脚光を浴びた人(『日本語の化学』にも掲載)。

●シャネラー=ブランドのシャネル・ファン(『若者ことば辞典』『日本語の化学』にも掲載)。

●スズラー=鈴里真帆ファン。

●タオラー=首にタオルを巻く若者のストリートファッションで九州でのみ流行したようだ(『日本語の化学』にも掲載)。

●ダジャラー=駄洒落をいう人。2006年には「わが社では課長のギャグがクールビズ」というサラリーマン川柳が当選した。

●ダフラー=ダフ屋に人気のベルサーチなどの派手なシャツで決めている男性(『日本語の化学』にも掲載)。

●チャリラー=「チャリンコ」(自転車)から来て、自転車に乗る人(『若者ことば辞典』にも掲載)。「チャリンコ」と「ライダー」から来ている「チャリダー」や「チャリンカー」という同義語もあるが、こちらが最初で、後に「ラー族」に統合されたと考えられる。

●トモラー=女優の山口智子のファンたち。

●ナオラー=タレント・飯島直子のような格好をしている女性(『若者ことば辞典』にも掲載)。

●ナルラー=ナルシスト(『若者ことば辞典』にも掲載)。

●2チャンネラー=ネットの掲示板2チャンネルに出没する怖い人たち。

●ネラー=「シャネラー」の略(『若者ことば辞典』にも掲載)。

●バクラー=「パクる」からで泥棒のこと(『日本語の化学』にも掲載)。

●ハモラー=カラオケで他人が歌っている曲にハモって歌う人(『若者ことば辞典』にも掲載)。

●ハバラー=「(秋)葉原ー」でヒマさえあれば秋葉原に通っている人(『日本語の化学』にも掲載)。

●バレズラー=ズラ(かつら)がばれている人(『日本語の化学』にも掲載)。

●ビニラー=コンビニのビニール包装弁当が主食の人(『日本語の化学』にも掲載)。

●フマキラー=キャバクラ用語で、害虫みたいな金なし、しつこい、ルックス最低の男性客(『日本語の化学』にも掲載)。

●プヨラー=落ちげー(物が起きてくるゲームソフト)の「ぷよぷよ」のうまい人、熱中している人(『若者ことば辞典』にも掲載)。※似たのに「テトリン」など。

●マオラー=甘粕りり子『麻布狸穴 午前二時』(講談社)に出てくる。「マオラーとは、マオカラーのジャケットを着用しパーティだのTV番組だのといった晴れ舞台に臨む中年紳士を指す。生息地は主に東京都心。演出家とか作家とか料理研究家とか司会者と、文化的職業が多い。あ、でも、格闘関係にもいたかも、マオラー。著名人率はかなり高い」。

●マツラー=女優の松たか子ファン。

●マドラー=リストラ寸前の窓際族(『日本語の化学』にも掲載)。

●マネラー=すぐに他人の影響を受けて真似をして、自分というものをしっかりもっていない人(『若者ことば辞典』にも掲載)。

●マヨラー=何にでもマヨネーズをかける人。トーストはもちろん、ご飯や、ポテトチップスにもかける人がいる。確かにおいしいけれど…。

●眉ラー=眉毛描きに全力を傾ける女性(『若者ことば辞典』『日本語の化学』にも掲載)。※1996年の新語。

●ミノラー=司会者の“みのもんた”からで押しが強くて厚顔無恥、ばあさんいじりのうまい人(『日本語の化学』にも掲載)。

●モノクローラー=モノクロ写真を撮る女子高生(『若者ことば辞典』にも掲載)。

 【2001年7月5日】

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□多民族国家日本・戦後日本の…族たち

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