金川 欣二:マックde記号論(言語学のお散歩)

「『ミッション・インポッシブル4』は下町で」


 2009年3月16日の「SMAP×SMAP」にトム・クルーズが出て新作映画『ワルキューレ』のPRをしていた。通訳は中元も歳暮も届くことを自慢にしている戸田奈津子だった。インタビューの字幕で「『ミッション・インポッシブル4』は東京の下町で」というのが出て、あっこれはスタッフの間違いだと思った。そしたら、戸田がその部分を通訳して、クルーズが「ダウンタウン東京」というのを「東京の下町で」と訳してしまったのだ。

 ご存じのように「ダウンタウン=下町」ではない。「繁華街」のことだ。住宅街は「アップタウン」という。ちょうど、「山の手」に相当するかも知れないが、例えば、『ET』のエリオット少年が住んでいるところが「アップタウン」だ。「繁華街」は山を降りたところにある。

 戸田奈津子の訳がまずい、というのはどこかにホームページがあるくらいだが、ここではそんなことをあげつらうつもりもない。『ミッション・インポッシブル』が寅さんのいるようなところで、戦われるのが見たかったというだけである。

 小さいころ大流行した曲に「恋のダウンタウン」というのがある。ペトゥラ・クラークの大ヒット曲だ。これも分かるように倍賞智恵子の「下町の太陽」みたいな歌ではない。

 僕が今の職場に就いた時に最初に使った教科書が『ラブ・ストーリー』だった。学生のレベルを知らなかったのだ。

 この時に、“fire department”を訳せ、という点数をあげます、みたいな問題を出した。これに対して、ある学生が「燃えているデパート」と訳してきた。『ジュラシック・パーク』の子孫を残せないように工夫された恐竜達のように、抜け道はなんとでも見つけるものらしい。

 あれから30年がたった。TOEICの授業をしていたのだが、ちゃんと教えてやっていたつもりだった。こんな問題を出した。

 “In Japan, Lufthanza operates nonstop flights to Frankfurt ever day from Tokyo, Osaka and Nagoya.”    注*nonstop直行

 つまり、ちゃんと教えて、注までつけて、しかも、試験の際に学生がLufthanzaが分からない、というのでルフトハンザという航空会社だとまで教えておいた。

 それが裏切られて、次のような解答になって返ってきた。

 「日本では、ルフトハンザという直行飛行操縦士が、毎日、東京と大阪と名古屋でフランクフルトを食べました」

  『ジュラシック・パーク』の子孫を残せないように工夫された恐竜達のように、誤答への抜け道はなんとでも見つけるものらしい。

  神よ、私をどこかにお導きください。


 

Back Home     please send mail.